ぺんてるが販売している金色と銀色の筆ペンです。
スケッチ向きのペンではありません。
元々、文字用ですので、この記事は本来の用途としての評価ではありません。
絵としてはイラスト系、着色になら使えそうです。
フィギュアの塗装に使う人もいるようです。
特徴
水性顔料インキで修正液と同じように分離しないように中に球が入っています。
使用前に振ってカタカタ動けばOKです。
動きがなければ固まっているので、なるまで振り続けます。
ペンの後ろを押せばペン先が出てインクが浸透する仕組みになっています。
注意点
使ってみて感じた注意点は下記になります。
対策も考えてみます。
- 乾いて固まりやすい
- プッシュしても乾きが戻らない
- 濃淡は付けにくい
- 輪郭線が見えなくなる
- スケッチとしての使い所が無い
乾いて固まりやすい
インクが少し粘度がある為、固まりやすいです。
蓋をしていても久し振りに使うとペン先が乾燥している場合があります。
描いてる最中にも乾燥する場合があります。
細かい部分をペン先の端の方だけで描いてるとインクの流れが少なくなる為、真ん中あたりから乾きやすくなります。
乾き始めると浸透もしにくくなるので、悪循環によりペン先はどんどん乾燥します。
かすれてない金とかすれた銀の例です。
かすれた状態では綺麗に書けません。
使用している時はできるだけインクの流れが停滞しないようにすることが重要です。
毛先全体を使うこと、プッシュを適度に使うことが大事ですね。
乾燥に対してデリケートなので、和紙のように吸水しやすい紙はすぐにかすれる為、避けた方がいいです。
プッシュしても乾きが戻らない
ちなみに、下記のプッシュ時の画像はすでに毛先が乾燥しています。
インクが浸透しないので、溢れて泡拭いてます。
ペン先の水分が減り過ぎると、ノックしてインクをにじまても戻らなくなります。
その場合は水分を与える必要があります。
水を一滴含ませる、または濡らしたティッシュや布で拭くと良くなります。
濃淡は付けにくい
基本的にはベタ塗りになります。
かすれを上手く利用するか、点描で描けば濃淡は表現可能ですが、難しいです。
水筆で延ばして薄めるということも難しいです。
顔料は元々水に溶けにくいですし、キラキラした成分が延ばせないです。
「一」は真ん中を水筆で延ばしています。
色は延びてますがキラキラは減っていることがわかります。
「●」は水筆で丸く延ばしつつ上から金銀をそれぞれ重ね塗りしています。
色は滲んで広がりますが、キラキラは広がっていません。
ぺんてるのサイトからはインクの成分まではわからないのですが、基本的にインクの金色は銅・鉛、銀色はアルミニウムを使うようです。
この金属成分が色よりも粒子が大きいと考えられます。
つまり、紙に染み込まず表面に付着した状態になります。
染み込んでないのでこすれば取れますし、水で滲ませれば色だけが紙に滲むということになるのです。
下記にイメージ図を記載します。
輪郭線が見えなくなる
不透明なので上に塗ると下の線が見えなくなります。
後から輪郭線を描き直した方が線がはっきりします。
※下記の使用例-風景画を参照
スケッチとしての使い所が無い
金属部分に使えそうですが、水彩絵の具や顔彩と色の質が全く違うので、全体で見ると違和感が出てしまいます。
有効的に使おうとするなら、スケッチ自体を金銀を使って意味のある画風を考える必要があります。
そうなると実際の風景を描くというよりはイラストを描くという作業になる気がします。
スケッチの彩色としては使いにくいと思います。
使用例
風景画
破風や勾欄(欄干)の装飾に金を塗りました。
上から塗った感が出ていて、元の輪郭線が目立たなくなってます。
紙自体が大きくないので、細かい形も描けないです。
目は引きますが、必要かどうかで言うと必要ではありません。
奈良にある霊山寺(黄金殿・白金殿)です。
絶好の画題と思い使ってみました。
線が消えるので水筆で延ばした結果、ほぼ灰色と黄土色です。
厚く塗って上から線を描き足すことできますが、それはそれで浮いてしまうのです。
絵画の模写
金のみではのっぺりしてしまうので、兜は上からうす墨を塗ってます。
髪や口などの濃い部分はうす墨、影や腕の薄い部分はうす墨を薄めた版で描いてます。
わかりにくいですが、鎧のうろこを金と銀を使ってます。
銀は使い所が無かったので、仕方なく使ってます。
この絵はいまいちですが、上手く使えば面白い画風を作れるかもしれません。
金と言えば19世紀の画家クリムトです。
一番有名な作品は「接吻」ですが、ポストカードを持っていたこちらの作品にしました。
イラスト
イラストや挿絵を描くのには向いています。
お祝いのメッセージに一筆添えるのにも黒より華やかになります。
そして、実は黒背景が映えます。
漆の技法である蒔絵も金粉、銀粉を使って装飾するので黒・金・銀の組み合わせはしっくりきます。
イラスト(ワンポイント利用)
ワンポイントで使うとアクセントに良さそうです。
試しにモノトーンの絵に差し色として金を入れてみます。
ジョジョの奇妙な冒険第7部のジャイロです。
うす墨で影や色が濃くなる部分を塗ってます。
金歯と言えばジャイロ・ツェペリです。
金の穂で塗ってみました。
写真だとわかりにくいですが、光の角度でキラキラしているのです。
金色がアクセントになってより印象的になりましたね。
なりましたね!
「納得」は全てに優先するぜッ!!
写経
仏教の経典の中には金泥と銀泥で描かれたものもあります。
京都国立博物館蔵にある中尊寺経です。
金字と銀字で交互に書かれており、装飾も豪華です。
流石、金色堂で有名な中尊寺に奉納された経典です。
大乗悲分陀利経巻第六(中尊寺経)
出典:京都国立博物館蔵
字を書くことこそ筆ペンの真骨頂です。
般若心経の写経もこれを使うと普通の筆ペンとは違った気持ちで書けそうです。
実は金字と銀字の交互の書き方で般若心経の写経に挑戦したことがあります。
残念ながら途中で行を間違えてしまいました。
ペンを変えるのに目が離れたことで、意識がずれたんだと思います。
修業が足りませんね。
仏画も含めてお経を書写することの難しさを実感しました。
ちなみに、書写された経典でも誤字の訂正が入っているものも見たことあります。
ただ、これだけ豪華に装飾されたものは誤字も無いかもしれません。
まとめ
基本的にスケッチには向きません。
イラストならアクセントとしてありです。
新しい画風や技法の可能性もあると思います。
風景画や人物画もポップアートのような使い方で面白い作品ができそうです。
金の穂、銀の穂を使った作品のコンテストとかがあれば見てみたいです。
以上
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