奈良国立博物館で開催されている特別展の感想です。
コロナ以降では去年に引き続きの来館です。基本的には毎年通うつもりです。
予定を決めるのがギリギリだったので、18:00からの予約しか残ってませんでした。
残ってるから空いているのかと期待しましたが、そんなことは無かったです。
流石、正倉院展。
特別展「第74回 正倉院展」 | 2022 |
特別展「第75回 正倉院展」 | 2023 |
特別展「第76回 正倉院展」 | 2024 |
概要
↑は毎年更新されそうなので、↓に奈良国立博物館の特別展のページも載せておきます。
展覧会 | 期間 |
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[特別展] 第75回 正倉院展 | 2023/10/28 ~ 2023/11/13 |
正倉院に収納されていた整理済の宝物の約9000件から毎年60点前後が公開される展覧会です。
※整理済は西宝庫、整理中は東宝庫に収蔵。
今年は初出陳6点を含む59点が出陳されています。
感想
今回の一番の目玉は琵琶です。
琵琶は装飾が凝っていて見応えがあるので、正倉院展の中でも人気がありますね。
チラシなどを見て注目の宝物は下記です。
No | 作品名 | 備考 |
---|---|---|
1 | 九条刺納樹皮色袈裟 | |
10 | 楓蘇芳染螺鈿槽琵琶 | お勧め |
23 | 平螺鈿背円鏡 | お勧め |
28 | 碧地金銀絵箱 | |
32 | 刻彫梧桐金銀絵花形合子 | |
33 | 紫檀小架 | お勧め |
41 | 碧地金銀絵箱 | お勧め |
46 | 赤地鴛鴦唐草文錦大幡脚端飾 |
初出陳は厨子の部品と、お経だったので、お勧めといものではありません。
以下に印象に残ったものを書いていきます。
九条刺納樹皮色袈裟
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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1 | ー | 九条刺納樹皮色袈裟 | ー | ー | 聖武天皇ゆかりの宝物 |
聖武天皇の遺愛品目録である「国家珍宝帳」の冒頭に記載されている宝物。
糞掃衣と呼ばれる修行僧がぼろぎれをつなぎ合わせて着ていたものが元になっています。
出家した聖武天皇が着ていたとも言われています。
・刺納 … 刺し子縫い
・樹皮色 … まだら色
切れ端をつなぎ合わせていますが、綺麗な模様になっています。
「樹皮色」と言うことで、迷彩っぽいくも見えます。
現存する最古の迷彩柄かもしれません
鳥草夾纈屏風/夾纈絁継分裂残片
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
9-1,2 | ー | 鳥草夾纈屏風 (第3,4扇) | ー | ー | 聖武天皇ゆかりの宝物 |
48 | ー | 夾纈絁継分裂残片 | ー | ー | 織りなされた祈り |
・鳥草夾纈屏風
2の方が尾長鶏の形が綺麗に残っています。
・夾纈絁継分裂残片
草花の文様が描かれています。
状態が良くないので、復元した状態を見てみたい。
糊で防染をする型染が主流ですが、正倉院の宝物では「夾纈」がよく使われています。
糊防染のように境界をくっきりと色分けできない為、ぼんやりと柔らかい雰囲気が出るのが特徴的です。
悪く言えばメリハリが無い。
・夾纈
板で挟んで防染する板締め染め。
天平の代表的な染色法を集めた「三纈」の1つ。
残り2つは下記です。
・纐纈
絞り染め。京都の絞り染めは今でも有名。
・﨟纈
蝋で防染。型で蝋を押し付ける。
下記に3種類の比較画像が載っています。
楓蘇芳染螺鈿槽琵琶
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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10 | ー | 楓蘇芳染螺鈿槽琵琶 | ー | ー | 天平のしらべ |
琵琶はいくつかありますが、これも素晴らしい。
螺鈿で側面や先端にまでびっしり飾られています。
今年のチラシの表紙にも選ばれた名品です。
ちなみに、現代の琵琶は五弦で、こちらは四弦です。
昔は四弦系、五弦系の2種類あったようです。
有名な「螺鈿紫檀五絃琵琶」は五弦です。
・四弦系 … ペルシャ発祥で曲頚琵琶
・五弦系 … インド発祥で直頚琵琶
斑犀把漆鞘黄金葛形珠玉荘刀子
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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19 | ー | 斑犀把漆鞘黄金葛形珠玉荘刀子 | ー | ー | 煌めく宮廷調度 |
紙を切ったり、木簡の文字を削る為の小刀。今で言うカッター。
黒の漆に金の金具とガラス玉(石?)が綺麗です。
これは武士の刀とは違いますが、刀の鞘の装飾にガラス玉を使っているのは見たことないかな。
そもそも、ガラス玉を使った日本の工芸品って印象がありません。
ネットで調べてみると、平安~室町時代は殆ど記録が残っていないようです。
源氏物語や枕草子にガラスの容器は出てくるらしいので、全くなかったわけでは無さそうです。
陶器の方が発展して、ガラスの方は廃れたという説もありました。
ガラスの方が割れやすいからか?
はっきりした理由はわかっていないようです。
平螺鈿背円鏡
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
23 | ー | 平螺鈿背円鏡 | ー | ー | 煌めく宮廷調度 |
螺鈿が凄い。
赤いのは琥珀で、地の部分はトルコ石を使っているようです。
チラシの表紙を飾れる一品です。
碧地金銀絵箱
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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28 | ー | 碧地金銀絵箱 | ー | ー | 捧げられた美 |
薄い碧色の箱で鳥と花の模様が描かれています。
内部は長斑錦と言う縞模様の生地が使われており、見えない所までこだわって作られています。
密陀彩絵箱
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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29 | ー | 密陀彩絵箱 | ー | ー | 捧げられた美 |
鳥と花が描かれた箱です。
「密陀絵」という油絵の技法で描かれています。
日本にも油を使った絵の具があったんですね。
・密陀絵
日本の油彩絵画技法。
乾性の油(えごま油など)に密陀僧(一酸化鉛)と呼ばれる顔料を溶く。
刻彫梧桐金銀絵花形合子
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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32 | ー | 刻彫梧桐金銀絵花形合子 | ー | ー | 捧げられた美 |
花形に木を彫った容器です。
元々は中国で金属のみで作られたものを日本で木に変えて作られたと考えられています。
脚の部分だけ金属(銅)を使ってると異国感がある気がします。
以前、出陳されていた「瑠璃坏」は銀製の脚でした。
紫檀小架
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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33 | ー | 紫檀小架 | ー | ー | 捧げられた美 |
用途不明のハンガーラックのようなもの。
高さは46.3cmで、思っていたよりも小さかったです。
用途がわからなくても象牙や玳瑁などの高級な素材が使われており、装飾も細かく、工芸品としての質の高さはわかります。
現代の工芸品展で展示されていても違和感ないです。
やはり巻物を架けて飾るものだろうか?
筆も置けそうだけど、筆を置くだけ、ということは無さそう。
上部の横棒が長いので、この長さに合ったものが架けられていたのではなかろうか。
斑犀如意/漆如意箱
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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36-1 | ー | 斑犀如意 | ー | ー | 捧げられた美 |
36-2 | ー | 漆如意箱 | ー | ー | 捧げられた美 |
カラフルな宝石で花の模様に飾られており、どれも綺麗な状態です。
花模様は中央に水晶、周りに琥珀や孔雀石が使われています。
箱も残るぐらいだから当時からも相当な逸品だったんだと思います。
青斑石鼈合子
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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41 | ー | 青斑石鼈合子 | ー | ー | 捧げられた美 |
岩を彫った写実的なスッポンの彫刻です。
背中にはわかりにくいですが、逆向きの北斗七星が描かれています。
亀を天地そのものと見立てて、天体の上(裏)から見ているから反転しているとのことです。
霊亀と北斗七星を関連付けて 仙薬七星散という不老長寿の薬を入れていたとも言われています。
赤地鴛鴦唐草文錦大幡脚端飾
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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46 | ー | 赤地鴛鴦唐草文錦大幡脚端飾 | ー | ー | 織りなされた祈り |
灌頂幡と呼ばれる仏教などの儀式で使う旗の下端を飾るものです。
鴛鴦が綺麗に残ってますね。
織物の製造をしている会社で復元をされてました。
以上
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