あべのハルカス美術館の特別展の感想です。
「円空仏」と呼ばれる木彫りの仏像で知られる円空の回顧展です。
概要
展覧会 | 期間 |
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[特別展] 円空 ―旅して、彫って、祈って― | 2024/02/02 ~ 2024/04/07 |
初期の頃から晩年の仏像が約160体と円空に関連した資料が展示されています。
・円空(1632-1695)
江戸時代の修験僧、仏師、歌人。
「円空仏」と呼ばれる木彫りの仏像が有名。
生涯に約12万体の仏像を作ったとされる。
円空が挿絵を描いた大般若経、僧として資料、歌の紹介もされていて、修験僧、仏師、歌人としての円空を知れる展覧会でした。
入口横には「護法神立像」と思われる2体がお出迎えしています。
説明は特になかったですが、第四章に展示されているものと同じものと思われます。
巡回展
・なし
感想
「円空仏」もタイプが色々あります。
最低限の彫刻しかしていない素朴なものや、豪快な彫りでエネルギッシュなものがあり、サイズも数センチのものから約2メートルと様々です。
沢山見れて、面白かったです。
円空の特別展は2013年に東京国立博物館で「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」を見て以来でした。
この時も「両面宿儺坐像」が表紙に使われてました。
円空|金剛力士(仁王)立像(吽形)
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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44 | 円空 | 金剛力士(仁王)立像(吽形) | 1685 | 岐阜県・千光寺 | 第四章 |
構成としては第四章の作品ですが、次の「近世畸人伝」(No.2)で記載されている像ということで、第一章の最初に展示されています。
顔はよく彫られていますが、身体はほぼ木ですね。
伴蒿蹊、三熊花顛|近世畸人伝【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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2 | 著:伴蒿蹊 画:三熊花顛 | 近世畸人伝 | 1790 | 京都府立京都学・歴彩館 | 第一章 |
国立国会図書館サーチ内
「袈裟山にも立ちながらの枯木をもて作れる二王あり」。
前述の「金剛力士(仁王)立像(吽形)」(No.44)について書かれている頁が紹介されていました。
枯木をを直接彫ったのか・・・。
松浦武四郎|東蝦夷日誌【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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3 | 松浦武四郎 | 東蝦夷日誌 | 1863 | 三重県総合博物館 | 第一章 |
「鉈作りの佛」、「湖中」、「圓空鉈作りの坐像の薬師如来」などの記載がありました。
山越諏訪神社にある円空仏のことのようです。
大森旭亭|円空像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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1 | 大森旭亭 | 円空像 | 1805 | 岐阜県・千光寺 | 第一章 |
原本は岐阜県・弥勒寺にあったが1920年に火災で焼失しています。
この絵は現存するころに大森旭亭が模写したそうです。
上の墨書は「一心」と書かれており、円空自筆と伝わる。
全く読めません。
法相中宗血脈/円空|大日如来坐像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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7 | ー | 法相中宗血脈 | 1671 | 岐阜県・弥勒寺 | 第二章 |
8 | 円空 | 大日如来坐像 | 1671 | 奈良県・法隆寺 | 第二章 |
「法相中宗血脈」は法隆寺で修業して受け取ったようです。
釈迦牟尼佛から始まり末尾に「円空」のような文字がありました。
・血脈
師から弟子へ受け継がれていくこと。それを証明するもの。
お釈迦様から始まる仏教の系譜につながる一人として認められること。
血脈を受けた後に依頼されたと言われています。
表情は柔和で、綺麗に彫られた仏像です。
円空らしい彫りも見えますが、全体的に優しいです。
法隆寺の仏像は「アルカイック・スマイル」が有名なので、その辺の影響もあるかもしれません。
・アルカイック・スマイル
古代ギリシャのアルカイック期(紀元前8~5世紀)の彫刻に見られた微笑みの表情。
同じような特徴だったことから、日本の飛鳥時代の仏像にも使われる。
ちなみに、「アルカイック」は古い、原始、などの意味がある。
アルカイック期は文化的な発展も見られる為、名称については否定的な意見もある。
円空|観音菩薩坐像/薬師如来坐像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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10 | 円空 | 観音菩薩坐像 | – | 岐阜県・美江寺 | 第二章 |
11 | 円空 | 薬師如来坐像 | – | 岐阜県・中屋薬師寺 | 第二章 |
裳懸座と呼ばれる衣の裾が台座を覆っている形式で造られた像です。
釈迦如来像(釈迦三尊像)や薬師如来像でも見られる形式ですが、円空の仏像は本体の倍以上の長さが特徴。
長い裾を見ていて、なんか胸にひっかかるものがあったのですが、わかりました。
生クリームの模様でした。
円空|大般若経
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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17 | 挿絵:円空 | 大般若経 巻第一/二一/二八一/五七一 | 1674 | 三重県・片田自治会 | 第二章 |
18 | 挿絵:円空 | 大般若経 巻第五二/六二/一一〇/五八四 | 1674 | 三重県・立神自治会 | 第二章 |
円空が挿絵を描いています。
仏像の印象しかなかったので、珍しかったです。
棟方志功の仏画のような雰囲気でした。
棟方志功が円空の絵をみたかはわかりませんが、仏像を見て感銘を受けていたそうです。
会場内の所々で登場する下記は立神の大般若経に押されている円空の校閲印です。
弁護士の方が校閲印について書いた記事があったので、参考に載せておきます。
円空|補修仏像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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23 | 補修部:円空 | 補修仏像 | 1676年頃補修 | 愛知県・荒子観音寺 | 第二章 |
顔面と右腕が補修されているのですが、当時の様式に囚われず独自の様式で補修されているようです。
これは賛否がある補修ですね。
現代の文化財として考えた場合、現在の状態を後世に残すことを重要視しているので、良くないです。
ただし、円空にとっては文化財ではなく、信仰の対象ですからこの考えは当たりません。
とは言え、全く違う様式を合わせるのはどうだろうか?
数年間にスペインで酷い修復があって、話題になりましたね。
円空|蔵王権現立像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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32 | 円空 | 蔵王権現立像 | 1680 | 埼玉県・観音院 | 第三章 |
左腕、左足がどうなっているのかよくわかりません。
片足を上げているような形が躍動感があるように見えます。
円空|役行者倚像/徳夜叉大善神像/護法大善神像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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33 | 円空 | 役行者倚像 | 1680 | 埼玉県・観音院 | 第三章 |
34 | 円空 | 徳夜叉大善神像 | 1680 | 埼玉県・観音院 | 第三章 |
35 | 円空 | 護法大善神像 | 1680 | 埼玉県・観音院 | 第三章 |
「役行者倚像」は頭の上に嘴のようなものがあります。
他の2つは顔の下半分が嘴のようになっています。
No.34の「徳夜叉大善神像」は先が尖っていなくて、アヒルのような嘴。
役行者、夜叉は天狗の一種とされる場合もあるので、烏天狗に近い表現になったのかもしれません。
烏天狗自体はNo.59、60で展示されていました。
円空|善女龍王立像/善財童子立像/阿弥陀如来立像/宇賀神像【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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39-1 39-2 | 円空 | 善女龍王立像 善財童子立像 | – | 岐阜県・温泉寺 | 第三章 |
40 | 円空 | 阿弥陀如来立像 | – | 岐阜県・温泉寺 | 第三章 |
41 | 円空 | 宇賀神像 | – | 岐阜県・温泉寺 | 第三章 |
顔はわかりますが、身体の構造はわかりません。
こういう作風は他にも見られます。
温泉寺は下呂温泉にあるお寺です。
行ったことがあったので気になりました。
円空|両面宿儺坐像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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43 | 円空 | 両面宿儺坐像 | 1685 | 岐阜県・千光寺 | 第四章 |
背中合わせではなく、正面を向いた状態で重なっています。
後ろ側の手もちゃんと彫られてます。
何かの印のような形をしている。
円空|観音三十三応現身立像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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47 | 円空 | 観音三十三応現身立像 | 1685 | 岐阜県・千光寺 | 第四章 |
現存するのは三十一体です。
一体一体に個性があります。
画像の上段の左から3つ目のぽっちゃり系がお気に入りです。
円空|烏天狗立像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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59 60 | 円空 | 烏天狗立像 | 1685 | 岐阜県・千光寺 | 第四章 |
烏天狗ということで、嘴がはっきりわかります。
円空|狛犬
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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61 | 円空 | 狛犬 | 1685 | 岐阜県・千光寺 | 第四章 |
言われないと狛犬とは思わないかも。
体の模様が狛犬の巻き毛っぽくて特徴は出ている。
円空|十一面観音菩薩立像/善女龍王立像/善財童子立像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 所蔵 | 備考 |
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76-1 76-2 76-3 | 円空 | 十一面観音菩薩立像 善女龍王立像 善財童子立像 | 1692 | 岐阜県・高賀神社 | 第五章 |
トーテムポールのように細い。
柱彫刻みたいにも見える。
以上
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