大阪にある和泉市久保惣記念美術館で開催されている特別展の感想です。
少し遠いこともあり、しばらく行ってなかった美術館です。
・久保惣(久保惣株式会社)
明治10年代後半に創業し、昭和52年に廃業した綿織物の会社。
廃業の際に3代目の久保惣太郎氏が美術品、美術館の建物などを和泉市に寄贈。
泉州は昔から「和泉木綿」が知られており、今も織物の会社が沢山ある。
概要
展覧会 | 期間 |
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[特別展] 宗達 -物語の風景 源氏・伊勢・西行- | 2023/09/17 ~ 2023/11/12 前期:09/17~10/15 後期:10/17~11/12 ※一部は特定の期間のみ展示 |
俵屋宗達を中心に同時代の絵師とあわせて、物語を描いた絵を集めた特別展になります。
色んな美術館や個人所蔵の作品が揃っているので、普段見れない作品も多いと思います。
国宝が1点、重要文化財が5点ですが、それぞれ期間が異なる為、注意が必要です。
詳細は上記の公式サイト内のリンク「出陳作品一覧(PDF)」を参照下さい。
指定 | 名称 | 作者 | 所蔵 | 展示期間 |
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国宝 | 蓮池水禽図 | 俵屋宗達筆 | 京都国立博物館 | 09/17~10/08 |
重文 | 関屋図屏風 | 伝俵屋宗達筆・烏丸光広書 | 東京国立博物館 | 10/31~11/12 |
重文 | 蔦の細道図屏風 | 伝俵屋宗達筆・烏丸光広書 | 相国寺蔵 | 全期間 |
重文 | 西行物語絵巻 巻二(絵)・巻五(詞)(渡辺家本) | 伝俵屋宗達筆・烏丸光広書 | 文化庁蔵 | 全期間 |
重文 | 扇面貼付屏風 | 俵屋宗達筆 | 醍醐寺蔵 | 全期間 |
重文 | 秋草図屏風 | 俵屋宗雪 | 東京国立博物館 | 前期 |
名著「奇想の系譜」でも紹介されていた岩佐又兵衛の作品も2点ありますので、取り上げておきます。
岩佐又兵衛の作品は見る機会が少ないので、貴重かと思います。
・「奇想の系譜」(1970年刊行)
美術史家の辻惟雄による美術書。
江戸時代の個性的な画家を紹介し、再評価するきっかけとなった。
<紹介された画家>
岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我簫白、長沢芦雪、歌川国芳。
指定 | 名称 | 作者 | 所蔵 | 展示期間 |
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– | 伊勢物語 宇津の山図 | 岩佐又兵衛 | MOA美術館蔵 | 全期間 |
– | 海辺に立つ貴人図(和漢故事説話図のうち) | 岩佐又兵衛 | 福井県立美術館蔵 | 後期 |
庭園が綺麗な美術館で、今は蓮の花が綺麗に咲いていました。
モネの「睡蓮」も所蔵されています。
紅葉もあるので、季節ごとで楽しめそうです。
巡回展
・なし
感想
物語絵なので話を知っている方が楽しめそう。
源氏物語、伊勢物語は初心者向けの本を読みましたが、うろ覚えです。
やまと絵の人物は基本的に引目鉤鼻です。
この顔が苦手だと厳しいかも。
・引目鉤鼻
やまと絵など、平安時代から鎌倉時代の風俗画に見られる顔の表現。
細く引いたような目に、くの字の鼻。あと、輪郭は下膨れ。
俵屋宗達の作品を集めた特別展はそんなに多くはないので、日本画が好きなら見ておきたい展覧会です。
本阿弥光悦・伝俵屋宗達|草花木版下絵古今和歌集【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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103 | 本阿弥光悦書・ 伝俵屋宗達下絵 | 草花木版下絵古今和歌集 | 江戸時代初期 | 前期 | 展示室1 |
名コンビの作品ですね。
宗達の簡略された絵はデザイン性が高い。
金と銀は一見派手そうですが、黒い字をひきたてている気がします。
伝俵屋宗達筆|伊勢物語図色紙【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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32 | 伝俵屋宗達筆 | 伊勢物語図色紙 第三段 ひじき藻(新出本) | 江戸時代初期 | 全期間 | 展示室2 |
33 | 伝俵屋宗達筆 | 伊勢物語図色紙 第四段 西の対(MOA美術館本) | 江戸時代初期 | 前期 | 展示室2 |
36 | 伝俵屋宗達筆 | 伊勢物語図色紙 第六段 二 雷神(益田家本) | 江戸時代初期 | 全期間 | 展示室2 |
60 | 伝俵屋宗達筆 | 伊勢物語図色紙 第八十一段 一 河原の院(益田家本) | 江戸時代初期 | 前期 | 展示室2 |
壁のデザインがモダン。
タータンチェックでよく使われる配色です。
同じデザインが32「第三段」、33「第四段」、60「第八十一段」で使われていました。
宗達と言えば「風神雷神図屏風」です。
ポーズはほぼ一緒ですが、身体の色が白と赤で違っています。
表情も今回の伊勢物語の方が、ユーモアがあって柔らかい印象です。
伊勢物語の六段「芥川の段」です。
この話は「鬼一口」という話でも知られています。
雷雨から蔵に逃れた女性が、蔵にいた鬼に一口で食われ、悲鳴が雷にかき消された、という話です。
鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」でも描かれており、下記の「画図百鬼夜行全画集」の164頁で見れます。
ちなみに、陰陽座と言うメタルバンドが「鬼一口」の曲を作っています。
これがまた格好良いんです。
※宗達の「伊勢物語」ではなく石燕の「鬼一口」のイメージです。
伝俵屋宗達筆|北野天神縁起扇面(宮中落雷)【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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69 | 伝俵屋宗達筆 | 北野天神縁起扇面(宮中落雷) | 江戸時代初期 | – | 展示室5 |
「伊勢物語図色紙」の雷神(No.36)より怖い顔をしています。
あちらの雷神は雷を鳴らすだけですが、こちらは菅原道真の怨念のこもった雷なので怖い雰囲気が合ってますね。
関屋澪標図屏風【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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29 | – | 関屋澪標図屏風 | 江戸時代中期 | 全期間 | 展示室5 |
座り方が蹲踞みたいだと思ったら、蹲踞でした。
平安時代から敬礼する時や儀式などで使われていたそうです。
相撲や剣道と違い、踵は地面につけるのが正しいようです。
股関節を開く運動にはなりそうですが、膝への負担が心配です。
伝俵屋宗達筆・烏丸光広|蔦の細道図屏風
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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70 | 伝俵屋宗達筆・ 烏丸光広書 | 蔦の細道図屏風 | 江戸時代初期 | 全期間 | 展示室5 |
伊勢物語の九段「東下り」に出てくる宇津の山の蔦が茂る道を描いた屏風です。
空間の切り取り方が大胆ですね。
山や道は単純化されていおり、蔦はマスキングしたかのように境目で途切れています。
賛が書かれている屏風なので、背景としての効果を考えて単純化しているのかも。
左右どちらでも絵が繋がることも面白いです。
以上
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