【美術】特別展「最後の浮世絵師 月岡芳年」/企画展「国芳一門の浮世絵師たち」芦屋市立美術博物館

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最後の浮世絵師 月岡芳年
最後の浮世絵師 月岡芳年

兵庫県にある芦屋市立美術博物館で開催中の特別展の感想です。
月岡芳年は好きな絵師なので、見に行ってきました。

概要

展覧会期間
[特別展]
最後の浮世絵師 月岡芳年
2023/07/22 ~ 2023/10/09
[企画展]
国芳一門の浮世絵師たち
2023/07/22 ~ 2023/10/09

芳年は「血みどろ絵」「無残絵」と呼ばれる過激な絵が注目されますが、実際には初期の一時期の画風だったようです。

この展覧会では武者絵、美人絵などの過激さ以外の面に注目した展示内容になります。
連作で有名な「月百姿」も展示されています。

構成

・第1章 芳年の壮
・第2章 芳年の想
・第3章 読物の妙
・第4章 芳年の妖と艶
・第5章 報道
・第6章 月百姿

エントランスホールには大きな「偐紫田舎源氏」がお出迎えです。

偐紫田舎源氏
偐紫田舎源氏

1階の歴史資料展示室では芦屋周辺の発掘品などが展示されていますが、小規模ながら企画展示のコーナーもあります。
今回は特別展に合わせた内容になっています。
芳年だけではなく、師匠の国芳の作品も展示されていますので、特別展に来られた方は忘れずに見ていって欲しいですね。

「国芳一門の浮世絵師たち」展示作品

・歌川国芳:本朝景色美人圖會
      源氏雲浮世画合 若菜 下
      四季遊観納涼のほたる
      泉水舟乗初

・歌川芳虎:風流弥生月

・落合芳幾:廓の雪光る遊君
・月岡芳年:一魁随筆 顔世御前
      新撰東錦絵 白木屋於駒の話
      風俗三十二相 しだらなさう
・楊洲周延:千代田之御表 於吹上公事上聴ノ図

巡回展

・なし

・芳年に関連した展覧会がありました。
 「芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル」

期間美術館都道府県
2023/02/25~04/09三菱一号館美術館東京
2023/07/08~08/27北九州市立美術館福岡

感想

国芳の門人でもあり、国芳の作品に通ずるところがあります。
国芳が好きなら、好きになれる絵師だと思います。

西洋画の技法も取り入れており、写実性や遠近感など、江戸時代の浮世絵から進化している点も魅力の一つです。

月岡芳年|一魁随筆 山姥 怪童丸【落書】

No作家名作品名期間備考
4月岡芳年一魁随筆いっかいずいひつ山姥やまんば怪童丸かいどうまる1873第1章 芳年の壮
一魁随筆 山姥 怪童丸
一魁随筆 山姥 怪童丸
制作情報

[制作日]
2023年08月06日 落書き/彩色

[道具]
・鉛筆
・色鉛筆
・ノート(リングノート)


解説にも書いてましたが、西洋画を意識した画になっています。
アモルとヴィーナス、または聖母子像のようにも見えます。

山姥には見えません。

怪童丸かいどうまる
金太郎(坂田金時さかたのきんとき)の幼名。快童丸。

月岡芳年|芳年武者旡類 曽我五郎時宗 五所五郎丸【落書】

No作家名作品名期間備考
11月岡芳年芳年武者旡類 曽我五郎時宗 五所五郎丸1886第1章 芳年の壮
芳年武者旡類 曽我五郎時宗 五所五郎丸
芳年武者旡類 曽我五郎時宗 五所五郎丸
制作情報

[制作日]
2023年08月06日 落書き/彩色

[道具]
・鉛筆
・色鉛筆
・ノート(リングノート)


曽我五郎時宗そがごろうときむねを取り押さえている五所五郎丸ごしょごろうまる視線が印象的です。
めっちゃカメラ目線!

「日本三大仇討ち」の一つである「曽我兄弟の仇討ち」の一場面です。
父の仇である工藤祐経くどうすけつねを打ち取った後、源頼朝の宿舎に忍び込んだ所です。

・日本三大仇討あだう
曽我兄弟そがきょうだいの仇討ち」
赤穂浪士あこうろうしの討入り」
伊賀越えいがごえの仇討ち」

月岡芳年|新撰東錦絵 生嶋新五郎之話

No作家名作品名期間備考
19月岡芳年新撰東錦絵しんせんあずまにしきえ生嶋新五郎いくしましんごろう之話1886第2章 芳年の想

大奥御年寄の江島(絵島)と歌舞伎役者の生島新五郎が密会している場面です。
「江島生島事件」が元になっています。
よしながふみ先生の漫画「大奥」(7巻)で覚えました。

・江島生島事件
江島は前将軍家宣の墓参りの帰りに、生島の芝居を見に行きます。
その後、茶屋で生島らを招いて宴会をします。
これにより、大奥の門限に遅れてしまい、通せ通さぬの押し問答になります。

このことが江戸中に知れ渡ります。
大奥の規律が緩んでいると、綱紀粛正として、関係者1400名が処罰されたのが事件の概要です。

大奥での対抗勢力による陰謀との説もあります。

月岡芳年|新形三十六怪撰 清盛福原に数百の人頭を見る図

No作家名作品名期間備考
31月岡芳年新形三十六怪撰 清盛福原に数百の人頭を見る図1890第2章 芳年の想

平清盛髑髏の取り合わせは定番のようです。
No.50「新容六怪撰 平相国清盛入道浄海」も同じように髑髏が描かれています。
晩年の清盛の死相を表しています。


<参考>

・歌川広重 「平清盛怪異を見る図」

・北為「福原殿舎怪異之図」
去年(2022年)の「ボストン美術館展」で見てました。

月岡芳年|新形三十六怪撰 ⿁若丸池中に鯉魚を窺ふ図

No作家名作品名期間備考
35月岡芳年新形三十六怪撰 ⿁若丸池中に鯉魚を窺ふ図おにわかまる       りぎょ  うかが    1890第2章 芳年の想

北斎の作品でも同じ画題があったかな、と思ったけど、違ってました。

思い浮かべた画は歌川国芳「坂田怪童丸」(金太郎)でした。

・⿁若丸
武蔵坊弁慶の幼名。

月岡芳年|新形三十六怪撰 布引滝悪源太義平霊討難波次郎

No作家名作品名期間備考
41月岡芳年新形三十六怪撰 布引滝悪源太義平霊討難波次郎ぬのびきのたきあくげんたよしひらのれいなんばじろうをうつ1890第2章 芳年の想

去年(2022年)の「ボストン美術館展」で国芳の同じ画題を見ていたので、印象に残りました。
悪源太が雷を落とす場面ですが、雷の表現は国芳の方が良いです
曲線より直線の方が合ってる気がします。

月岡芳年|奥州安達がはらひとつ家の図

No作家名作品名期間備考
58月岡芳年奥州安達がはらひとつ家の図おうしゅうあだち                 1885第3章 読物の妙

血は出ていませんが、残酷な画です。
今回の展示の中では一番刺激的な絵でした。

月岡芳年|風俗三十二相 うるささう 寛政年間処女之風俗

No作家名作品名期間備考
85月岡芳年風俗三十二相 うるささう 寛政年間処女之風俗          かんせいねんかんおとめのふうぞく1888第4章 芳年の妖と艶
うるささう 寛政年間処女之風俗
うるささう 寛政年間処女之風俗

猫が好きなので、載せておきます。

以前で別の展覧会で見た際にポストカードを買ってました。No.140と同じ時です。

月岡芳年|郵便報知新聞 第五百六十五号

No作家名作品名期間備考
98月岡芳年郵便報知新聞 第五百六十五号1875第5章 報道

今回の展示で血が出ていたのはこれだけでした。
殺人事件の記事です。

場所は備中国浅口群玉島村です。(現在の岡山県倉敷市の玉島地域)
田嶋政太郎は再婚相手の安と口論が絶えない為、離婚します。
その後、老母と子供を一人で養うのが苦しくなり、寄りを戻そうとするが、けんもほろろに断られたことを恨んで殺害した、という内容です。

月岡芳年|月百姿 朱雀門の月 博雅三位

No作家名作品名期間備考
115月岡芳年月百姿 朱雀門の月 博雅三位          はくがのさんみ1886第6章 月百姿

平安時代の公卿である源博雅(手前)と朱雀門の鬼(奥)が笛を吹き合い、笛を交換した逸話が元になっています。

漫画版ですが、岡野玲子・夢獏良先生の「安倍晴明」では晴明のパートナーとして描かれており、朱雀門の鬼の話は第6巻に収されています。

月岡芳年|月百姿 玉兎 孫悟空

No作家名作品名期間備考
140月岡芳年月百姿 玉兎 孫悟空1890第6章 月百姿
月百姿 玉兎 孫悟空
月百姿 玉兎 孫悟空

構図が良い。

No.85と同じで、これも別の展覧会で見た際にポストカードを買ってました。

月岡芳年|月百姿 つきの発明 宝蔵院

No作家名作品名期間備考
147月岡芳年月百姿 つきの発明 宝蔵院           ほうぞういん1891第6章 月百姿
月百姿 つきの発明 宝蔵院
月百姿 つきの発明 宝蔵院
制作情報

[制作日]
2023年08月06日 落書き/彩色

[道具]
・鉛筆
・色鉛筆
・ノート(リングノート)


宝蔵院流は十文字の槍が特徴です。

宝蔵院流槍術の祖である胤栄が、水面に映る三日月槍の影が重なって十文字に見えた所から発想を得た場面です。
場所は猿沢池さるさわいけだそうです。

漫画の「バガボンド」(5巻など)では胤栄と弟子の胤瞬が登場し、宮本武蔵との対決が描かれています。

月岡芳年|新撰東錦絵 白木屋於駒の話

No作家名作品名期間備考
35月岡芳年新撰東錦絵 白木屋於駒の話1886企画展

髪を引っ張られている人の表情が面白いです。
一見ユーモラスな画に見えますが、「白子屋事件」という事件が元になっていいます。

白木屋於駒しろきやおこま
人形浄瑠璃「恋娘昔八丈こいむすめむかしはちじょう」(1775年初演)のヒロイン。
「白子屋事件」(1726年)の犯人の一人である白子屋お熊しろこやおくまがモデルで、お熊は市中引き回しの後、さらし首になった。


以上

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