約12,000点の浮世絵のコレクションで知られる太田記念美術館です。
2ヶ月ごと位にテーマを決めた企画展をしています。
外国人の方も多く、かなり混雑していました。
概要
展覧会 | 期間 |
---|---|
[特別展] 浮世絵お化け屋敷 | 2024/08/03 ~ 2024/09/29 前期:08/03~09/01 後期:09/06~09/29 |
幽霊や妖怪など、怖さを感じるような作品を集めた展示になっています。
前期と後期で全点展示替えになるので、浮世絵好きはどちらも必見ですね。
前期後期合わせて174点あり、初公開も38点含まれていて、見応えのある展覧会です。
感想
月岡芳年|和漢百物語 大宅太郎光圀
歌川芳員|将軍太郎良門蟇ノ術…
梅堂小国政|相馬旧御所
歌川芳虎|越中立山の地嶽谷に肉芝道人…
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
3 | 月岡芳年 | 和漢百物語 大宅太郎光圀 | 1865 | ー |
4 | 歌川芳員 | 将軍太郎良門蟇ノ術ヲ以て相馬の内裏を顕し 亡父の栄花を見せ父のあだをほふぜんと 士卒をはけまし軍評定の図 | 1852 | ー |
6 | 梅堂小国政 | 相馬旧御所 | 1893 | ー |
139 | 歌川芳虎 | 越中立山の地嶽谷に 肉芝道人蛙合戦の奇をあらはし 良門伊賀寿の両雄に妖術を授く | 1852 | ー |
4枚とも平将門が作った相馬の内裏(御所)の跡を舞台にした絵です。
よく見かける画題なので、整理しておきます。
・「相馬の古内裏」の概要
<主な登場人物>
[謀反側]
・平良門(平将門の子)
・滝夜叉姫(平将門の子)
・荒井丸(滝夜叉姫の部下)
・伊賀寿太郎(藤原純友の部下)
[退治側]
・大宅太郎光圀(源頼信の家臣)
<概要>
謀反側が妖怪を集めて謀反を企てている所を、大宅太郎光圀が退治する話。
滝夜叉姫と大宅太郎光圀は山東京伝の「善知安方忠義伝」に出てくる架空の人物で、伊賀寿太郎も実在するかは怪しい。
平将門と藤原純友は939年に乱を起こしており、940年に将門、941年に純友は討たれているので、二人の恨みを晴らす為の謀反企て。
<和漢百物語 大宅太郎光圀>
大宅太郎光圀が滝夜叉姫が妖術で出した骸骨と出会う場面です。
国芳は巨大な骸骨を描いていたので、ちょっと物足りないかも。
有名な国芳の「相馬の古内裏」は後期の展示です。
過去にも見ています。
<将軍太郎良門蟇ノ術>
小さな蛙が集まって大きな蛙になっているのが面白いです。
蛙の口から将門の内裏の様子が映し出されています。
<相馬旧御所>
明治にあった相馬事件を風刺しているようです。
旧中村藩(相馬中村藩)の藩主が監禁されたことに伴い、法廷争いまで広がった事件があったようです。
手前の幽霊の額に「中」の文字が見えます。
絵としては右側の人物は大宅太郎光圀なのかな?
<越中立山の地嶽谷に肉芝道人…>
巨大な蛙の前に座る道人(仙人)が不気味です。
手間では沢山の蛙が戦っており、鳥獣戯画や北斎漫画のようなユーモアさもあります。
平将門の子である良門、藤原純友の将軍である伊賀寿に妖術を授ける場面です。
歌川国貞(三代豊国)|東駅いろは日記
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
13 | 歌川国貞(三代豊国) | 東駅いろは日記 | 1861 | ー |
三枚続ですが、左と中央の簾の傷み具合が合ってないですが、版が違っていたりするのかな?
月岡芳年|和漢百物語 登喜大四郎
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
14 | 月岡芳年 | 和漢百物語 登喜大四郎 | 1865 | ー |
如来の顔が凄いです。
漫画の「グラップラー刃牙」に出てきそう。
全員、悪者に見えます。
歌川国芳|風流人形の内 一ツ家の図 祐天上人
月岡芳年|奥州安達がはらひとつ家の図
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
17 | 歌川国芳 | 風流人形の内 一ツ家の図 祐天上人 | 1856 | ー |
19 | 月岡芳年 | 奥州安達がはらひとつ家の図 | 1885 | ー |
幽霊や妖怪の怖さとは異なる人間の怖さです。
鬼婆で知られる伝説「黒塚」の場面です。
<風流人形の内 一ツ家の図 祐天上人>
芳年の方はよく見る印象ですが、国芳の方は記憶になかったです。
縁側下の骨が怖いですね。
祐天上人は増上寺(浄土宗)の高僧で、念仏で怨霊を鎮めたりして江戸時代のエクソシストとの異名もあるようです。
夢の中で不動明王から剣を授かったという逸話もあります。
この画は祐天上人が鬼を退治するという設定ですが、「黒塚」の話自体は平安時代なので、脚色された設定ですね。
<奥州安達がはらひとつ家の図>
芳年は「血みどろ絵」、「無残絵」と呼ばれる残酷な画も有名です。
この絵には血は出てないですが、その後の展開を想像することで、「血みどろ絵」とされています。
月岡芳年|新形三十六怪撰 布引滝悪源太義平霊討難波次郎
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
45 | 月岡芳年 | 新形三十六怪撰 布引滝悪源太義平霊討難波次郎 | 1889 | ー |
雷を落とそうとしている瞬間です。
悪源太は国芳の画が一番ですね。
月岡芳年|新形三十六怪撰 さぎむすめ
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
65 | 月岡芳年 | 新形三十六怪撰 さぎむすめ | 1889 | ー |
雪と白鷺、白無垢の女性が描かれており、パッと見ると全体的に白が多いです。
ただ、よく見ると着物の柄や白鷺の羽が空摺で描かれています。
歌川広景|江戸名所道戯尽 二 両国の夕立
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
93 | 歌川広景 | 江戸名所道戯尽 二 両国の夕立 | 1859 | ー |
雷神が隅田川に落ちてしまった場面です。
這い上がろうとしている所を河童に足を掴まれているのですが、雷神が屁をこいたようで河童が鼻を摘まんでいます。
間抜けな出来事が渋滞してますね。
落合芳幾|東京日々新聞 六百九十七号
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
138 | 落合芳幾 | 東京日々新聞 六百九十七号 | 1874 | ー |
鰐に襲われた事件を描いたものです。
明治初期に出来事を浮世絵にすることが流行ったようで、錦絵新聞とも呼ばれます。
この時代の日本近海に鰐がいたかは疑問なので、鮫かもしれません。
歌川国芳|百人一首之内 大納言経信
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
141 | 歌川国芳 | 百人一首之内 大納言経信 | 1836-44 | ー |
源経信が和歌を詠むと、鬼が漢詩で答えたそうです。
漫画の吹き出しみたいになっています。
歌川芳藤|髪切の奇談
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
152 | 歌川芳藤 | 髪切の奇談 | 1868 | ー |
黒い熊のような妖怪です。
絵を見る限りでは「髪切」というよりも「髪喰」の方がしっくりきます。
夜なので、太った変質者だったのかもしれませんね。
以上
コメント