神戸で開催されている日展の感想です。
神戸ゆかりの美術館/神戸ファッション美術館(同じ建物内)で開催されています。
日展(第9回 神戸展) | 2022 |
日展(第10回 神戸展) | 2023 |
概要
展覧会 | 期間 | YouTube |
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[特別展] 日展(第10回 神戸展) | 2024/02/17 ~ 2024/03/24 | 解説(総集編) |
毎年開催されている現在の作家の公募展で、国内では最大規模です。
東京、京都、愛知、兵庫、石川で巡回もしています。
現代芸術のような抽象的な作品は少なく、基本的には綺麗な作品が多いです。
(工芸は一部現代的な作風もあります。
現在の大きな美術団体がどういう作品を扱っているのか知るのには最適な展覧会です。
・日展
日本美術展覧会の略。
日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書の五部門で開催される日本最大の総合美術展覧会。
元は文部省主催の「官展」として開催されていたが、1958年から民間開催となる。
不正審査問題があり、2014年から再スタートしているので今年が第9回となる。
年 | 内容 |
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1907 | 第1回文展(文部省美術展覧会) ⇒1918の第12回まで開催 |
1919 | 第1回帝展(帝国美術展覧会) ⇒1934の第15回まで開催 |
1935 | 開催無し ※「松田改組」という体制改革があり、大揉め |
1936 | 【春】改組第1回帝展 【秋】昭和11年文展 |
1937 | 第1回新文展(新文部省美術展覧会) ※1940は「紀元2600年奉祝展」として開催 ⇒1943の第6回まで開催 |
1944 | 戦時特別展 |
1945 | 開催無し |
1946 | 第1回日展(日本美術展覧会) ⇒1957の第13回まで開催 |
1958 | 第1回日展(日本美術展覧会) ※民営化後 ⇒1968の第11回まで開催 |
1969 | 改組第1回日展 ※役員変更に伴い改名/2回目以降は「改組」を無くす ⇒2013の第45回まで開催 |
2014 | 改組 新 第1回日展(改組新日本美術展覧会) ※不正審査問題により改名 |
神戸展では総数538点が展示されています。
地元入選作品が多く含まれるので、内容は開催場所によって変わります。
神戸は兵庫、大阪、奈良、和歌山が地元に含まれています。
殆どの作品で写真撮影が可能でした。
撮影禁止マークがある作品もあるので、撮る時は注意が必要です。
巡回展
期間 | 美術館 | 都道府県 |
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2023/11/03〜2023/11/26 | 国立新美術館 | 東京 |
2023/12/23~2024/01/20 | 京都市京セラ美術館 | 京都 |
2024/01/24~2024/02/12 | 愛知県美術館ギャラリー | 愛知 |
2024/02/17~2024/03/24 | 神戸ゆかりの美術館 神戸ファッション美術館 | 兵庫 |
※1月の能登半島地震の影響により中止 | 石川県立美術館 | 石川 |
感想
いつも通り、作品数が多いので見応えがありました。
絵が好きなので、絵を中心に見てます。
工芸はまぁ楽しめるんですが、書は難しいです。
巡回展の地域は去年と同じ関東(東京)、関西(京都/兵庫)、中部(愛知)、北陸(石川)中止 の4地域で、基本的にこの4地域は巡回していますね。
過去には長野、長崎、岡山なども巡回していました。
名の知れた展覧会なので、九州、東北ぐらいは毎年あっても良さそう。
関西に2回来てくれるのはありがたいですが、全国の作家が対象なので、できるだけ多くの地域を周って欲しいかな。
来場者が集まらないのか・・・??
去年も洋画の一室を撮影していましたが、同じ舞妓がいますね。
調べてみると、宇野孝之氏の「川風」でした。
去年は「葉月」。
他にも同じモデルと思われる作品があったので複数描いているようです。
以下に印象に残ったものを書いていきます。
福田季生|天体観測【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 福田季生 | 天体観測 | 2023 | ー | 日本画 |
浴衣を着ているので祭りだろうか。若い娘4人が天体観測している様子です。
手前の浴衣は青系なので、星空に調和しますね。
地面の境界があいまいで、幻想的な感じもあります。
余談ですが、最近、Seria(セリア)でガラスペンを手に入れました。
何を描くか考えていた所、浴衣の柄を見て、朝顔に決めました。
とりあえず、一緒に買ったインク11色を全部使って描いてみました。
久保嶺爾|古梅香香(飛鳥)
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 久保嶺爾 | 古梅香香(飛鳥) | 2023 | ー | 日本画 |
奈良にある飛鳥村の風景。
城のような石垣が印象的でした。
池内璋美|秋麗
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 池内璋美 | 秋麗 | 2023 | ー | 日本画 |
銀杏が一面に広がって綺麗です。
根元周辺は緑の葉もあり、季節の移ろいを感じます。
全体的に金を散りばめているのが、木漏れ日のような空気感が出ている
東山魁夷の「行く秋」も同じような構図でした。
どちらも良いです。
村居正之|STAR
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 村居正之 | STAR | 2023 | ー | 日本画 |
去年、印象的だったので同じ画家の作品だとすぐにわかりました。
最初は建物に目がいきますが、画面半分を占める夜空も綺麗です。
西田眞人|懐
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 西田眞人 | 懐 | 2023 | ー | 日本画 |
早朝だろうか。
青く、しんとした空気感を感じます。
白の絵の具で細かいでこぼこがあります。
霧の表現だろうか。
青木秀明|青龍-時空に漂い流水に舞う-
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 青木秀明 | 青龍-時空に漂い流水に舞う- | 2023 | ー | 日本画 |
メタリックな色を使った絵を描かれる画家です。
他にも使っている作品はありますが、一番多用していると思います。
正面から見るとわかりにくいので、下から見るのがお勧めです。
画像だとわかりにくいですが、照明の反射でキラキラして見えます。
西野千惠子|らんまん
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 西野千惠子 | らんまん | 2023 | ー | 日本画 |
木の幹に細かい模様が描かれていて独特の表現です。
去年、象の絵が印象的だったので覚えていました。
浅見文紀|小さな冬景色
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 浅見文紀 | 小さな冬景色 | 2023 | ー | 洋画 |
西洋画の静物画のような絵ですが、段ボールは現代的な素材ですね。
細かい所までリアルです。
中島健太|匿名の地平線-ver. blue-
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 中島健太 | 匿名の地平線-ver. blue- | 2023 | ー | 洋画 |
透き通るような青が印象的です。
写実的ではあるんですが、青過ぎてラッセンの海のような非現実感もあります。
・クリスチャン・ラッセン [Christian Riese Lassen]
アメリカの画家。
マリンアートと呼ばれる、海やイルカなどの生物を描いた絵が有名。
中辻伸|大気の海
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 中辻伸 | 大気の海 | 2023 | ー | 彫刻 |
海や山から水蒸気が出て、雲になる様子を表現しています。
大気がテーマなので、白くて柔らかさを感じる作品になっています。
余談ですが、Viperというバンドのアルバムジャケットを思い出した。
・ヴァイパー [Viper](1985~1996、2001~)
ブラジルのヘヴィメタル・バンド。
日本では1991年にセカンドアルバム「Theatre Of Fate」(1889年発表)が発売される。
ジャーマンメタル(Helloweenなど)の影響、クラシックの要素を取り入れていることが特徴。
宮坂慎司|singing figure Ⅴ
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 宮坂慎司 | singing figure Ⅴ | 2023 | ー | 彫刻 |
身体が無く、服だけのトルソーは珍しいかな。
中は空洞のようです。
余談ですが、漫画「僕のヒーローアカデミア」に出てくる葉隠透(透明になる能力がある)を思い出した。
橋本昇三|開闢
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 橋本昇三 | 開闢 | 2023 | ー | 工芸美術 |
和紙を使った作品は珍しい。
雲の表現に和紙を大胆に使っていて面白いです。
岩や油の絵具があるのだから、紙を使うのもありでしょう。
和紙の素材感をどれだけ生かせるかが重要です。
上端伸也|silhouette
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 上端伸也 | silhouette | 2023 | ー | 工芸美術 |
模様が細かくて綺麗です。
陶器にここまで細かい模様を描いているのはあまり見たことがない。
岩渕浩之|円舞
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 岩渕浩之 | 円舞 | 2023 | ー | 工芸美術 |
今回は漆工芸はこれだけだった。
背景の木のシルエットが影絵みたい。
その隙間に螺鈿が使われていて綺麗です。
鳥には卵の殻が使われているそうです。
辻元邑園|浦上玉堂詩
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 辻元邑園 | 浦上玉堂詩 | 2023 | ー | 書 |
浦上玉堂は江戸時代の文人画家です。
知っている画家の名前だったので、書いておきます。
書いている内容は詳しくはわかりませんが、ほとんどは風景のことを書いていそうです。
あと、琴が出てきて、酒を探してるみたいなので、風流なことを書いているんでしょう。
郊原春月曉 曉樹擁煙霞
竹處鶯聲度 雲邊鴈影斜
紅然山草色 白炙野桃花
錢杖兼琴管 携行探酒家
ちなみに、浦上玉堂は琴を嗜んでいて、子供の名前が長男は春琴、次男が秋琴でした。
岡山県出身なので、岡山に旅行に行った時に春琴の作品を見ていました。
藤井香穂/曽我部昌甫|陶淵明詩
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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– | 藤井香穂 | 陶渕明詩(飮酒他) | 2023 | ー | 書 |
– | 曽我部昌甫 | 陶淵明詩 | 2023 | ー | 書 |
陶淵明(365-427)は酒好きの詩人です。
聞いたことある名だと思ったら、長沢芦雪の絵で見てました。
感想「KH FASHION BOX」
彫刻が展示されている辺りで「KH FASHION BOX」という展示スペースがあります。
名誉館長であるコシノヒロコの絵画と洋服が常設展示されています。
絵は抽象画です。
ファッションは赤やオレンジなどを沢山使った情熱的なデザインです。
・コシノヒロコ
ファッションデザイナー。
姉妹3人がファッションデザイナーであることから、「コシノ三姉妹」として知られ、その長女。
母親の小篠綾子(1913-2006)、娘の小篠ゆま(1968-)もファッションデザイナー
・コシノ三姉妹
長女:コシノヒロコ(1937-)
次女:コシノジュンコ(1939-)
三女:コシノミチコ(1943-)
以上
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