大阪歴史博物館の特別展です。
川瀬巴水は好きな画家なので、行かないという選択肢が無いです。
画像の看板はチラシと同じ内容で、時計回りに「大坂道頓堀の朝」(No.221)、「芝増上寺」(No.142)、「馬込の月」(No.159)です。
大阪なので大阪の絵が採用されていますね。
概要
展覧会 | 期間 |
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[特別展] 川瀬巴水 旅と郷愁の風景 | 2024/10/05 ~ 2024/12/02 |
川瀬巴水は明治以降の版画家の中でも有名で人気があります。
わかりやすい綺麗な画なので、江戸時代の浮世絵版画が微妙な人にもお勧めです。
・川瀬巴水(1883-1957)
大正から昭和にかけて活躍した版画家。
糸屋(糸組物職人)の家に生まれるが、画家を志す。
日本画→洋画→日本画を経て、伊東深水の「近江八景」に感銘を受けて版画を始める。
版元の渡邊庄三郎に出会い、ともに「新版画」を確立する。
・新版画
明治から昭和に浮世絵の復興を目的に作られた木版画。
新版画や渡邊庄三郎については去年の展覧会で見ていたので覚えてました。
会場の最後にはスティーブ・ジョブズ関連の展示があります。
ジョブズは川瀬の作品が好きで集めていたようです。
また、橋口五葉の版画「髪梳ける女」をMacの画面に映している雑誌の頁が紹介されていました。
実物の版画も展示されていました。
NHK大阪放送会館からの入り口にある広告です。
ここにも大阪が採用されています。
左:「馬込の月」(No.159)
中:「二見ヶ浦」(No.212)
右:「大坂宗右衛門町の夕」(No.213)
巡回展
期間 | 美術館 | 都道府県 |
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2021/10/02〜2021/12/26 | SOMPO美術館 | 東京 |
2022/01/07〜2022/02/20 | 大分市美術館 | 大分 |
2022/04/16〜2022/07/03 | 秋田県立美術館 | 秋田 |
2022/09/30〜2022/11/06 | 鹿児島市立美術館 | 鹿児島 |
2023/02/03〜2023/03/28 | パラミタミュージアム | 三重 |
2023/04/01〜2023/06/11 | 広島県立美術館 | 広島 |
2023/07/01〜2023/07/30 | 松坂屋美術館 | 愛知 |
2023/09/02〜2023/10/01 | 石川県立美術館 | 石川 |
2024/01/24〜2024/03/06 | 高松市美術館 | 香川 |
2024/04/05〜2024/06/02 | 八王子市夢美術館 | 東京 |
2024/07/11~2024/08/25 | 山形美術館 | 山形 |
2024/10/05~2024/12/02 | 大阪歴史博物館 | 大阪 |
感想
塩原三部作
No | 作品名 | 年 | 備考 |
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1 2 3 | 塩原おかね路 塩原畑下り 塩原しほがま | 1918 | 第1章 |
東京都立博物館・美術館収蔵品検索
川瀬のデビュー作で版画家になるきっかけになった作品です。
輪郭線が太く、色も濃い。
当り前ですが、川瀬巴水でイメージする画風ではないですね。
旅みやげ第一集【落書】
No | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|
9 13 15 20 | 陸奥三嶌川 仙台山の寺 房州岩井の浜 秋の越路 | 1919 1920 | 第1章 |
<陸奥三嶌川>
当時は池みたいな状態だったんですね。
場所は変わっているようですが、今でも蛇口から汲めます。
<仙台山の寺>
仙台市にある洞雲寺です。
1943年に山火事で焼失している為、当時の建物ではありません。
焼失前の配置図を見ると特徴的な階段が見られます。
No.191でもこの場所を描いてます。
<房州岩井の浜>
ホルスタイン柄の牛がいました。
庶民が牛乳を飲むようになったのは明治になってからだそうです。
<秋の越路>
海藻みたいなのを干していますが、エゴ草かテングサかな?
昔は新潟でもテングサが獲れていたようですが、1990年代には無くなったようです。
生活排水による汚染の影響らしいです。
東京十二題
No | 作品名 | 年 | 備考 |
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27 29 31 | 夜の新川 大根がし 品川沖 | 1919 1920 | 第1章 |
<夜の新川>
夜空の星が五芒星の形で描かれています。
気にしてませんでしたが、川瀬の星はこの描き方が多そうです。
<大根がし>
川岸と舟で野菜売り場面です。
今だと東南アジアでありそうな風景です。
当時は水運がメインですから、今より水路が多かったんでしょうね。
<品川沖>
海の向こうに見えるのはお台場ですね。
東京十二ヶ月
No | 作品名 | 年 | 備考 |
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37 38 | 三十間堀の暮雪 谷中の夕映 | 1920 1921 | 第1章 |
<三十間堀の暮雪>
細かい斜めの筋が入っていて吹雪いている感じが出ています。
タワシなどを使って版木に傷を付けて表現しているそうです。
<谷中の夕映>
谷中にある天王寺の五重塔で、幸田露伴の小説「五重塔」(1892年)のモデルにもなりました。
1772年に明和の大火により焼失しており、1791年に再建しています。
この時の再建が話のモデルになっていますね。
小説の中では「感応寺」となっていますが、1833年に「天王寺」に改号されています。
1957年の放火で焼失している為、現存していません。
旅みやげ第二集
No | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|
54 57 | 大坂道とん堀の朝 おぼろ夜(宮嶋) | 1921 | 第1章 |
<大坂道とん堀の朝>
No.221と同じ画題です。
構図も似てますが、こちらは青が綺麗です。
<おぼろ夜(宮嶋)>
よく見ると鹿がいます。
日本風景選集
No | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|
96 97 98 102 103 | 岡山城 雪の金閣寺 京都鴨川の夕暮 岡山内山下 肥前金浜 | 1922 1923 | 第1章 |
<岡山城>
戦災で焼失している為、現在の天守は戦後に鉄筋コンクリートで再建されたものです。
形は当時の天守を再現されているので、川岸に沿った斜めの壁も健在です。
<雪の金閣寺>
青と白で描かれた雪景色です。
金閣らしい色は無いですが、青が綺麗な画です。
<京都鴨川の夕暮>
明治から昭和にかけて行われていた「友禅流し」の風景です。
染物の糊や染料を洗う為に自然の川を利用していましたが、汚染問題もあり現在では見られなくなった風景です。
<岡山内山下>
雨合羽を着ている男性。廃刀している?警官?
西の丸にあった石山門で、門は戦災で焼失していますが、「石山門跡」として石垣が残っています。
<肥前金浜>
解説に眼鏡橋とあったから、あの眼鏡橋かと思ったら違いました。
知ってる眼鏡橋は長崎市にある二連アーチの方で、こちらは雲仙市にある眼鏡橋でした。
他にも諫早市の「眼鏡橋」、南島原市の「飯野眼鏡橋」があったりします。
旅みやげ第三集
No | 作品名 | 年 | 備考 |
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120 121 124 | 周防錦帯橋 房州太海 大坂天王寺 | 1924 1925 1927 | 第2章 |
<周防錦帯橋>
錦帯橋は修復は何度かされてますが、形は基本的に当時と変わらなさそうです。
<房州太海>
香指神社の鳥居です。
房州太海は藤田嗣治も描いてました。
<大坂天王寺>
四天王寺も空襲で焼失してますね。
北側の鼓楼辺りからの景色かな?
東京二十景
No | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|
142 148 159 | 芝増上寺 上野清水堂 馬込の月 | 1925 1928 1930 | 第2章 |
<芝増上寺>
代表作の一つですね。
何度も見てますが、良い物です。
<上野清水堂>
広重の名所江戸百景でも描かれた名所です。
丸い木の枝が印象的です。
ちょうど今年の夏に行った所でした。
<馬込の月>
チラシの表紙に使われています。
松の隙間から見える月と民家の窓の光が穏やかな夜を感じさせます。
虫の声も聞こえてきそうです。
東海道風景選集
No | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|
171 180 | 尾州瀬戸 月夜の富士(河合橋) | 1934 1947 | 第2章 |
<尾州瀬戸>
瀬戸焼の窯の風景です。
セピアっぽい色の夕暮れで月も見えます。
<月夜の富士(河合橋)>
手前の木の輪郭線が太くはっきりしています。
背景の富士山は淡く描かれていますが、かえって雄大さが際立っているようにも見えます。
日本風景集 東日本篇
No | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|
191 206 参考出品 | 仙台山之寺 弘前最勝院 弘前最勝院 順序摺 | 1933 1936 1945年頃 | 第2章 |
<仙台山之寺>
「仙台山の寺」(No.13)と同じお寺です。
こちらは雨の風景です。
<弘前最勝院>
「芝増上寺」(No.142)と構成が似ていますね。
雪の白と建物の赤、そして、傘を差す人。
参考出品として「順序摺」が展示されていました。
日本風景選集Ⅱ 関西篇
No | 作品名 | 年 | 備考 |
---|---|---|---|
212 213 221 | 二見ヶ浦 大坂宗右衛門町の夕 大坂道頓堀の朝 | 1933 | 第2章 |
<二見ヶ浦>
三重県にある夫婦岩です。
2020年に行きましたが、岩の形は変わってませんね。
<大坂宗右衛門町の夕>
画像検索していたら春芳という絵師の「大阪宗右衛門町」(1937)がほぼ同じ構図でした。
巴水より後なので怪しいですね。
構図は違いますが、雪の増上寺も描いています。
<大坂道頓堀の朝>
朝日が眩しいです。
向かいの舟が神々しい。
No.54と同じ画題で構図も似てますが、印象がまるで違いますね。
The Japan Trade Monthly
No | 作品名 | 年 | 備考 |
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262 263 | 表紙(No.68) 表紙(No.98) | 1950 1954 | 第3章 |
<表紙(No.68)>
サンタクロースの方は去年見ていたので覚えていました。
<表紙(No.98)>
法隆寺の夢殿です。
当時は朱色だったのかもしれません。
以上
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