【美術】特別展「美しい春画」細見美術館

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美しい春画
美しい春画

京都の細見美術館で開催されている特別展です。
春画の展覧会は少ないので貴重です。

(2024/10/20 後期を追記)

概要

展覧会期間
[特別展]
美しい春画
-北斎・歌麿、交歓の競艶-
2024/09/07 ~ 2024/11/24
 前期:①09/07~09/23 ②09/25~10/14 
 後期:③10/16~11/04 ④11/06~11/24
  ※前期後期:作品入替
  ※①~④:頁替、巻替
映画期間
春画と日本人
in 京都シネマ
2024/10/04 ~ 2024/10/10
2024/11/01 ~ 2024/11/07 ※好評のため追加

版画だけではなく肉筆の春画にも注目した展覧会で、北斎の「肉筆浪千鳥」は日本初公開の希少品です。

また、デンマークの浮世絵コレクターでもあるミカエル・フォーニッツのコレクションから22点公開されているので、こちらも必見です。

春画は1722年の享保の改革で規制されるようになり、版元や絵師の名を隠すといった地下出版の形式がとられるようになったようです。
結果的に規制されなくなり、逆に金、銀、雲母、青貝など豪華な作品が作られようになったそうです。

構成
  1. 上方春画の世界かみがたしゅんが      (第1展示室)
  2. 北斎・歌麿の競艶きょうえん(第1~第2展示室)
    ・絵筆と版木絡み合う北斎の3作品(第3展示室)
  3. 魅惑の浮世絵春画(第2展示室)

春画は当時の性愛の価値観で楽しまれたものなので、今の感覚で同じような楽しみ方は難しいと思います。
現代のエロ本を見る感覚で当時の人が楽しんでいた、と思ってはいけませんね。
女性の胸も、現代のような性的なものではなかったようですから。

まぁ、当時は当時、今は今で楽しめればいいかな。

巡回展

・なし

感想(美しい春画)

伝住吉具慶|小柴垣草紙【落書】

No作家名作品名期間備考
1住吉具慶すみよしぐけい小柴垣草紙こしばがきぞうし17世紀
原本は平安時代
前期1.上方春画
2袋法師絵詞後期
小柴垣草紙
小柴垣草紙
制作情報

[制作日]
2024年09月14日 鉛筆
2024年09月23日 色鉛筆

[道具]
・鉛筆
・色鉛筆
・ノート(リングノート)

5/14頁

No.1、No.2に「稚児之草紙」を加えて中世の三大性愛絵巻と呼ばれます。
「稚児之草紙」は展示されていません。
醍醐寺が所蔵しているのですが、内容が僧侶と稚児による男色とのことです。
女色は展示されているので、単に男色だけなら展示しても良さそうですが、宗教が関わってくるので扱いが難しいのでしょうか。
No.1は斎宮、No.2は尼さんが登場しますが・・・。

<小柴垣草紙>
斎宮さいぐう選ばれた済子なりこと、武士の平致光たいらのむねみつとの情事です。
平安時代の密通事件が元になっています。(実際にあったのかは不明)
縁側で交わる二人の横に他の人物もいて、かなり大胆な場面と思ったんですが、時系列的には別の場面かもしれません。

展示されていた絵はリンク先の5頁目の絵だったのですが、縁側が横に続いていて人が描かれていました。
摸本がいくつかあるので、違いはありそうです。

斎宮さいぐう
伊勢神宮、賀茂神社に奉仕した未婚の内親王(皇女)を斎王さいおう斎皇女いつきのみこ)と言い、伊勢神宮では斎宮、賀茂神社では斎院さいいんとも呼ばれる。
元は伊勢神宮の斎王の御所のことで、賀茂神社の斎王と区別する為に斎王=斎宮として使われている。


ちなみに、平致光は大河ドラマ「光る君へ」と同じ時代の人物です。
ドラマには9月時点では登場してませんが、兄の平致頼たいらのむねよりと共に藤原伊周ふじわらのこれちかに従っていたそうです。
致頼の方はドラマにも登場しています。

伊周、もういいから大人しくしててくれ・・・。

狩野山楽、英一蝶|鶺鴒巻【落書】

No作家名作品名期間備考
5狩野山楽かのうさんらく:第1~11図
英一蝶はなぶさいっちょう:第12図
鶺鴒巻せきれいかん16~17世紀
18世紀
通期1.上方春画
鶺鴒巻(第11図)
鶺鴒巻(第11図)
制作情報

[制作日]
2024年10月20日 鉛筆/色鉛筆

[道具]
・鉛筆
・色鉛筆
・ノート(リングノート)

今回唯一の狩野派です。
春画は浮世絵のイメージがあるので、狩野派の作品は珍しいですね。
元々12図あったが、欠けていた分を英一蝶が補填したそうです。
 
「鶺鴒」の題名については、日本書紀の神話に因んでちな    います。
イザナギとイザナミが交わり方を知らなかった時、セキレイが尾を上下に振る所を見て知ったそうです。

武者が登場するので、歴史上のモデルがいたりするのでしょうかね?

後期③は第11図と第12図でした。
第11図では年増と若い尼さん二人が道具で交わっているのを、男が覗き見しながら手でしています。
前期に展示された北斎の「萬福和合神」(No.21)によると、「女嶋互形    たがいがた」という道具です。

月岡雪鼎|四季画巻

No作家名作品名期間備考
8月岡雪鼎つきおかせってい四季画巻1772-81前期:春・夏
後期:秋・冬
1.上方春画

四季ごとに季節の花と、季節のイメージとなる交わりの画です。
前期①は、後期③はが展示されていました。

・春:梅と椿/少女
・夏:菖蒲/妙齢
・秋:白菊/妊娠中の円熟
・冬:水仙/お歯黒の年増

金箔で豪華です。
屏風サイズで見てみたいです。

月岡雪斎|娼妓とオランダ人図【落書】

奥村政信|秘戯図巻

No作家名作品名期間備考
11月岡雪斎つきおかせっさい娼妓しょうぎとオランダ人図18-19世紀前期1.上方春画
40奥村政信秘戯図巻1716-36前期3.魅惑の
娼妓とオランダ人図
娼妓とオランダ人図
制作情報

[制作日]
2024年09月14日 鉛筆
2024年09月23日 色鉛筆

[道具]
・鉛筆
・色鉛筆
・ノート(リングノート)

女性から出る分泌液を飲むと男性は精力が増し元気になると考えられていたそうです。
この絵は椅子の上に座った女性の股間から垂れる分泌液を椅子の下から器で受け止めている場面です。

No.40も同様の場面でした。
こちらは男性が清か朝鮮っぽい服装でした。
分泌液を採るのは有名な話なのか?

耽溺図断簡

No作家名作品名期間備考
54耽溺図断簡1781-1801後期1.上方春画

顔の描写が他とは一線を画していて印象的でした。
大正時代に流行った不気味、グロテスクを思わせるような画です。
目も江戸時代の浮世絵にしては写実的に見えます。

月岡派、松村景文、葛飾北斎|閨中交歓図

No作家名作品名期間備考
13月岡派閨中交歓図けいちゅうこうかんず19世紀後期1.上方春画
14松村景文閨中交歓図19世紀前期1.上方春画
15葛飾北斎閨中交歓図1810~19前期2.北斎・歌麿
葛飾北斎

同じ作品名の3点です。
「閨中」は寝室のことです。

前期はNo.14、No.15の2点が展示されているので、見比べてみると面白いです。
構図は似た所もありますが、画風や人物の表情が違います。
北斎のNo.15は肉筆です。

葛飾北斎|春愁図

No作家名作品名期間備考
16葛飾北斎春愁図1810~19後期2.北斎・歌麿

北斎らしい波打ったような着物の表現に、沢山の柄が色鮮やかに描かれています。
色と柄がバランス良く配置されていて、北斎の色彩感覚の素晴らしさを感じる作品です。

葛飾北斎|萬福和合神

No作家名作品名期間備考
21葛飾北斎萬福和合神1821前期2.北斎・歌麿

江戸時代の性の道具が描かれている頁があります。
「道鏡鎧甲」「光謙帝香合」が気になりますね。

奈良時代の女帝である孝謙天皇(称徳天皇)と道鏡の関係は有名な話です。
道鏡は巨根として知られていたので、鎧と甲を付けて『君も道鏡になれる!』といった感じでしょうか。
香合の方は催淫の薬だそうです。
女帝は性欲が強かったという話もあります。
まぁ、どちらも真相はわかりません

江戸時代は現代よりも「天皇」は遠い存在だったと思います。
江戸は京都の御所からも遠いので、江戸の人間からすればほぼファンタジーでしょう。
漢字を変えているとは言え、帝をこういう物の名前に使うのは現代でも難しい。

喜多川歌麿|階下の秘戯

No作家名作品名期間備考
23喜多川歌麿階下の秘戯1801-06通期2.北斎・歌麿

階段では男女がイチャついていますが、メインはその下です。
女性が大根で自慰をしています。
野菜を使うのも歴史が深そうですね。

面白かったのでチケットホルダーを買いました。
2場面が外と内に使われています。
大事な所はカットされているので安心して使えます

喜多川歌麿|ねがひの糸口

No作家名作品名期間備考
25
26
喜多川歌麿ねがひの糸口1799通期2.北斎・歌麿

崩し字はあまり読めませんが「おれも いくぞ いくぞ」と読める所がありました。

歌川豊春|艶画十貳図

No作家名作品名期間備考
42歌川豊春艶画十貳図1768~1813後期3.魅惑の

歌川派の祖です。
嫌がっている女を男が無理やり襲っているようにな場面があるのですが、男のモノからは既に液が垂れています。
表情もそんな感じなので、滑稽に見えてしまう。

鳥文斎栄之|四季競艶図

No作家名作品名期間備考
45鳥文斎栄之ちょうぶんさいえいし四季競艶図1789~1801前期:春夏
後期:春夏秋冬
3.魅惑の

吉原を舞台に四季を描いたものです。
よく見ると4枚とも女性が男を見ていない
仕事なのはわかっていますが・・・。

秋では窓の外に堤が見えていて、鳥居の上部分だけ見えていて埋まっているように見えます。
おそらく、墨田川を挟んで堤の先にある三囲神社みめぐり    です。

歌麿「三囲神社の御開帳」

歌川国芳|逢見八景

No作家名作品名期間備考
64歌川国芳逢見八景1833前期3.魅惑の

盥に女性の股間がアップで描かれた過激な作品です。
展示されていたのは上記の11頁目です。

画が11頁あって、八景と1対1というわけでは無さそうです。
最後の千鳥と浪の画は少なくとも関係無さそうです。

伝歌川国芳|妖怪見立陰陽画帖【落書】

No作家名作品名期間備考
53伝歌川国芳妖怪見立陰陽画帖19世紀通期3.魅惑の
妖怪見立陰陽画帖
妖怪見立陰陽画帖
制作情報

[制作日]
2024年09月14日 鉛筆
2024年09月23日 色鉛筆

[道具]
・鉛筆
・色鉛筆
・ノート(リングノート)

女性器の顔をした入道(?)から何かが出ていて、男性器の顔をした鼠が逃げています。


あいみょんがテレビで春画が好きなことを語っていて、この作品を紹介していたそうです。
「ハルノヒ」が好きでアルバム「おいしいパスタがあると聞いて」は一時期よく聞いていました。
他のアルバムも聴いてみます。

歌川国貞|艶紫娯拾餘帖、花鳥余情 吾妻源氏、正写相生源氏

No作家名作品名期間備考
65
66
67
歌川国貞艶紫娯拾餘帖えんしごじゅうよじょう
花鳥余情 吾妻源氏かちょうよじょう あづまげんじ
正写相生源氏しょううつしあいおいげんじ
1835
1837
1851
通期3.魅惑の
艶紫娯拾餘帖
花鳥余情 吾妻源氏
正写相生源氏

美人画をよく描いた国貞です。
三源氏さんげんじと呼ばれる国貞の春画の代表作3点です。
色が鮮やかで、細かい柄や模様まで綺麗に描かれています。
雲母や空摺も使われていて、角度を変えて見ると模様が見える部分もあって、見応えがあります。
画としての質が高いです。

夢想の歳時記

No作家名作品名期間備考
56夢想の歳時記19世紀通期3.魅惑の

鍾馗が後ろから鬼を攻めていたり、狐や兎と交わっていたり、ユーモアな絵で描かれています。
股間を杵でついているのも馬鹿馬鹿しくて良いです。
よくわからないものもありました。

内容
1陰陽物
2狐(初午稲荷詣、葛の葉)
3雛人形
4尼(灌仏会の甜茶?)
5鍾馗と鬼(端午)
6夏越の祓の形代
7影灯篭
8月・兎・天女
9栗長陽
10面壁達磨(達磨忌)
11雪女
12餅つき

鈴木春信|風流艶色真似ゑもん

No作家名作品名期間備考
59鈴木春信風流艶色真似ゑもんふうりゅうえんしょくまねえもん1770通期3.魅惑の

二人の仙女から小さくなる仙薬をもらい、小さくなって色んな場面を覗くといった企画ものです。
猫もお盛んです。

葛飾北斎|富久寿楚宇、浪千鳥、肉筆浪千鳥

No作家名作品名期間備考
19
20
17
葛飾北斎富久寿楚宇ふくじゅそう
浪千鳥
肉筆浪千鳥
1810-19通期2.北斎・歌麿
北斎の3作品)
富久寿楚宇

・富久寿楚宇:全て版木(文あり)
・浪千鳥  :版木(輪郭)、筆(色)
・肉筆浪千鳥:全て筆

No.20「浪千鳥」は色がグラデーションを使っていて、細かい所まで表現されています。
背景には金粉のようなものも使われています。
何枚かは男性器の頭部分に金粉が入っているものもありました。
背景が透けているだけだろうか?

感想(春画と日本人)

春画と日本人
春画と日本人

たまたま京都シネマの上映内容を確認したらやっていたので、見に行ってきました。
春画に関する専門家の話と、2015年に東京の永青文庫で開催された「春画展」に関する話を追ったドキュメンタリーです。
大規模の展覧会はこの時が日本初でした。

日本人の性の価値観や、春画の価値観について考えさせられる映画でした。
展覧会で展示されている作品も出てくるので、改めて実物を見たくなりました。
というわけで、後期も行きますね。
展覧会をこれから見に行く人にはお薦めです。

とりあえず、気になった点をメモしておきます。

・美術史家の辻惟雄氏の講演あり
 (著書「奇想の系譜」など)
・哲学者、作家の梅原猛氏のインタビューあり
 (著作、スーパー歌舞伎、スーパー能など)
・葛飾北斎、文章も自分で書いている
 オノマトピア(擬声語)が多用されている
・春画は中国の春宮画が元と言われている

開催場所については色んな場所に断れるなど、かなり苦労されたようです。
映画の中で国立の博物館でやって欲しいとの願望もありましたが、まだまだ難しそうです。
永青文庫も細見美術館も私立の美術館でしたね。

浮世絵としては美術品ですが、性器や性交の絵としては公の場では猥褻物と見なされます。
それが現代の価値観なのだから仕方がないとも思えます。(それが悪とも言えません
ただ、無修正の春画の出版物は売られていたり、性器を模したオブジェを使った祭りがあったりするのに、展示は駄目とはどうなのか、と思うのもわからないではない。
難しいですね。


春画と西洋画のヌードについて自分の中で整理をしたくなったので、メモします。
西洋画にも性描写の絵はあるようですが、詳しくは調べれてません。(銅版画「イ・モーディ」など)
逆に春画以外でヌードを描く日本画はあったかな?

 春画西洋画のヌード
対象・性交あり
・性器を使った絵画表現
 (性器のアップ、擬人化など)
性交なし
登場人物が裸なだけ
感覚当時:女子供も見ていた
   有名な絵師も大体描いてる
   ⇒美術品として見ていた?今の漫画感覚?
現代:浮世絵としての価値がある
   性的な絵としても見られる
   ⇒複数の価値感があり、扱いが複雑
    ※明治以降に西洋の価値観に変わった
裸体を描くのはあくまで、美
※元は神話の女神など、非現実のみ
 近代になって現実のヌードが登場

以上

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