大阪中之島美術館の特別展の感想です。
日本画家の福田平八郎の回顧展です。
概要
展覧会 | 期間 |
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[特別展] 没後50年 福田平八郎 | 2024/03/09 ~ 2024/05/06 前期:03/09~04/07 後期:04/09~05/06 ※4/9~4/23「漣」の展示休止 |
福田平八郎は大正から昭和にかけて活躍した日本画家です。
大分県出身で、京都の美術学校に入学し、以降は京都で活動していきます。
簡略化、デザイン化されたような画風が特徴ですが、若い頃から晩年の作品まで展示されているので、色んな画風の作品を見れます。
第1章は画風を模索している所で色んな画風の絵を見れます。
第2章は王道に近い日本画。
第3章で福田平八郎の個性がはっきり出てきます。
第4章、第5章にかけて、より簡略化されたり、抽象的な表現も見えてきます。
垂れ幕と展示室の入口前にある撮影スポットです。
巡回展
感想
福田平八郎は京都国立近代美術館の特別展で見てから好きになった画家です。
美術館に行き始めた頃だったので、独特の画風が印象深かったです。
今回、関西での回顧展は17年ぶりと聞いて、そんな前じゃないだろ、と思ったら平成19年だった。
恐ろしい話です。
その時はポストカードを4枚買ってました。
・「牡丹」(1924)
・「茄子」(1927)前期
・「真鯉」(1936)
・「雨」 (1953)後期(No.81)
驢馬と鵲/池辺の家鴨【落書】
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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4 | 驢馬と鵲 | 1915 | 後期 | 第1章 |
7 | 池辺の家鴨 | 1916 | 通期 | 第1章 |
どちらも動物を描いてますが、竹内栖鳳の画風に似ている。
調べてみると1915年から1918年は竹内栖鳳が教授をしている学校に通っていました。
年 | 竹内栖鳳 | 福田平八郎 |
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1899 1909 1911 1915 1918 1924 | 京都市立美術工芸学校(*1)の教諭となる 京都市立絵画専門学校(*2)の教授に就任 : : : : 京都市立絵画専門学校を退く | : : 京都市立美術工芸学校に入学 京都市立美術工芸学校を卒業 京都市立絵画専門学校に入学 京都市立絵画専門学校を卒業 : |
*2 現・京都市立芸術大学
春の風/曲芸の図/寺のある風景/驢の図/緬羊
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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6 | 春の風 | 1916 | 通期 | 第1章 |
9 | 曲芸の図 | 大正前期 | 後期 | 第1章 |
10 | 寺のある風景 | 1916 | 通期 | 第1章 |
14 | 驢の図 | 1918 | 通期 | 第1章 |
16 | 緬羊 | 1918 | 通期 | 第1章 |
<春の風>
目がお面の様で、足も違和感がある。
まだ勉強中という感じですね。
<曲芸の図>
人物の身体がかなりデフォルメされて洋画っぽいです。
<寺のある風景>
富岡鉄斎のようなダイナミックな文人画。
<驢の図>
こちらも文人画。大津絵の様なおおらかな感じもある。
<縮羊>
「平八郎」の名を始めて使用した作品。
これも洋画っぽい。
安石榴
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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18 | 安石榴 | 1920 | 通期 | 第2章 |
猫が気になって近くで見てみると、あまり可愛くなかった。
近代の日本画らしい感じで、独特の個性はまだ出てないですね。
紫陽花孔雀図
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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21 | 紫陽花孔雀図 | 1921 | 3/26~5/6 | 第2章 |
紫陽花は輪郭線の上から色を厚め塗っているので、境界がぼんやりしている印象です。
白い孔雀と薄紫の紫陽花が上手く調和している気がします。
仔犬【落書】
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
23 | 仔犬 | 1921 | 後期 | 第2章 |
福田平八郎の仔犬です。
眠たそうな仔犬が可愛い。
草河豚・鰈
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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30 | 草河豚・鰈 | 1924 | 通期 | 第2章 |
二匹の草河豚と鰈が配置されていますが、遠近感、位置関係がよくわかりません。
不思議な構図です。
「鰈」とありますが、左を向いているので「鮃」かもしれません。
腹が上下どっちだったか見落としました。
白梅上鶲
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
31 | 白梅上鶲 | 1924 | 通期 | 第2章 |
細い枝の止まっていたので、「止まれるか?」と思ってしまった。
朝顔
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
33 | 朝顔 | 1926 | 通期 | 第2章 |
レースのように透き通りそうな白い朝顔。
漣/水/鮎/双鶴鴨/写生帖
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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39 | 漣 | 1932 | 通期 | 第3章 ※4/9~4/23は展示休止 |
43 46 47 58 89 132 133 158 | 鮎 双鶴 鴨 鮎 水 漣(大下絵) 漣 水 | 1935 1935年頃 1935年頃 1940 1958 1932 1932 1958 | 通期 通期 通期 通期 通期 通期 通期 後期 | |
208 | 水 | 1935年頃 | 通期 | 新発見資料 |
171 173 179 180 202 203 | 写生帖 | 1929 1932 1938 1938 1957-1958 1958 | 入替あり |
「漣」と「漣」に関係がありそうな作品がまとめて展示されています。
下絵として描かれたものや、水面などの波の表現を模索したと思われる絵です。
「双鶴」の水面の表現が面白いです。
面白いけど、絵の完成度としては微妙かも。
一見、自分でも描けそうだけど、配置や色など絶妙なセンスがいりそう。
残念ながら、4/9~4/23は展示休止中だった為、「漣」は写真(?)でした。
元々、この日はモネを見る予定でしたが、人の多さに断念しました。
「漣」が無いので、少し迷いましたが、見たことあるのと、大阪で所有されているので、また見る機会もあるだろうと考えて、見に行きました。
「漣」が無いことで、少しは空いたかもしれんし。
鳩/日の出
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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59 | 鳩 | 1940 | 通期 | 第3章 |
60 | 日の出 | 1940 | 通期 | 第3章 |
大分の宇佐八幡宮(宇佐神宮)の御造営記念に奉納された作品です。
「鳩」は羽毛がデザイン化されていて、ステンドグラスにできそう。
「日の出」は金地に太陽だけのシンプルなデザイン。
手形と不倒翁図
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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61 | 手形と不倒翁図 | 1940 | 通期 | 第3章 |
双葉山(1912-1968)のサインがあります。
第35代横綱で、同じ大分出身です。
1940年は有名な69連勝が止まった翌年です。
カーネーション、百合
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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137 | カーネーション、百合 | 1942 | 通期 | 第3章/素描・下絵 |
構図はシンプルな静物画。
花や葉は輪郭を白く縁取って描かれてます。
壷の絵も細かく描かれています。
新雪
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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71 | 新雪 | 1948 | 通期 | 第4章 |
薄く積もった雪が柔らかそうです。
雨
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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81 | 雨 | 1953 | 通期 | 第4章 |
151 | 雨 | 1953 | 後期 | 素描・下絵 |
199 | 写生帖 | 1952 | 入替あり |
最初に好きになったのはこの絵です。
瓦を真上から描いた大胆な構図です。
瓦の表面にある雨粒の跡で雨を表現しているのが面白いと思いました。
氷
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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85 | 氷 | 1940 | 通期 | 第4章 |
200 | 写生帖 | 1955-1956 | 入替あり |
天気図も写生していたらしい。
これは氷の泡でした。
氷の下に空気の層がある状態の絵です。
桃
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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87 | 桃 | 1956 | 通期 | 第4章 |
漆(?)と思われる盆に載っていて、桃が盆に反射していて綺麗です。
海魚/游鮎
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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100 | 海魚 | 1963 | 通期 | 第5章 |
106 | 游鮎 | 1965 | 通期 | 第5章 |
かなりデフォルメされた画です。
熊谷守一(1880-1977)の作風に似てますね。
交流があったかはわかりませんが、ほぼ同時代を生きているので、意識はしてるかもしれませんね。
紅白餅/うす氷/牡蠣と明太子
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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146 | 紅白餅 | 1949 | 通期 | 第5章/素描・下絵 |
145 | うす氷 | 1949 | 通期 | 第5章/素描・下絵 |
153 | 牡蠣と明太子 | 1953 | 後期 | 第5章/素描・下絵 |
食べ物の素描が3点並んで展示されていました。
「うす氷」は富山県の銘菓で、この絵をデザインに使った特別版が売られてました。
「薄氷本舗 五郎丸屋」さんの看板商品です。
中は上下に綿がぎっしり詰められて、割れずに守られてました。
高級感があります。
とても上品なお菓子でした。
砂糖と米を使った薄い煎餅で、サックリ触感で優しい甘さです。
他の物で例えると、極薄のマカロンかな。
雲
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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74 | 雲 | 1950 | 通期 | 第4章 |
写実的ではなく、シンプルな青と白。
でも何だか気持ちのいい空です。
以上
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