あべのハルカス美術館で開催されている特別展の感想です。
TVで見てから気になっていた絵師だったので、まとまって見れるのが嬉しい。
概要
展覧会 | 期間 |
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[特別展] 恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金 | 2023/04/22 ~ 2023/06/18 前期:04/22~05/21 後期:05/23~06/18 |
幕末から明治初期に土佐で活躍した絵師で、通称として絵金と呼ばれてますが、画号は友竹、友竹斎、雀翁などを使用しています。
夏祭りで飾られる芝居絵屏風が有名で、怖い絵が多いです。
江戸や上方とも違った独特な画風は誰が見ても印象に残るとは思いますが、好みは分れそうです。
高知県以外での大規模な展覧会は約50年振りらしいので、自分が関西で見れるのはこれが最後になりそう。
展示品は高知県下の色んな所から集められているので、高知県でもこれだけ揃った状態で見ること中々無さそうです。
少しでも気になれば見ておくことをお勧めします。
特筆すべきは第2章。
祭りの際に使用する絵馬台が再現されていて、実際の状態に近い状態で展示されています。
照明も昼と夜が切り替わって、良い感じでした。
第1章、第3章は前期後期でほぼ総入れ替えになります。
■略歴
年 | 内容 |
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1812 | 高知城下で生まれる |
南画家の仁尾鱗江に師事 | |
1827 | 御用絵師の池添楊斎に師事 |
1829 | ・江戸へ上る ・土佐藩御用絵師の前村洞和に師事 ・幕府御用絵師の狩野洞益に師事 |
1832 | 土佐に戻り、林洞意の名で御用絵師となる |
1844 | ・林姓と御用絵師をはく奪 贋作事件に巻き込まれた説あり ・弘瀬柳栄を名乗る |
慶応 | ・赤岡で定住 ・金蔵をの名乗る ・高知に戻る |
1876 | 65歳で亡くなる |
巡回展
・なし
感想
TVで見てから数年経ってますが、やっぱりインパクトがありました。
色が鮮やかに残ってるのが良いですね。
祭りの時以外は外に出してないのかもしれません。
半期で展示替えが多いので、両方見ても満足感のある内容でした。
絵金|浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森【落書き】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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1 | 絵金 | 浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森 | ー | 前期 | 二曲一隻屏風 |
一つ目から刺激的な絵です。
白井権八が雲助を返り討ちにした場面で、白井は本庄助太夫を殺した為、子の本庄助八の仇討を助太刀して褒美にあやかろうとした雲助に襲われました。
この絵の石塔には「友竹(斎)」の隠し落款が描かれています。
実際に見て見るとうっすら見えます。
正面側にも何か描いてそうでしたが、よくわからなかったです。
絵金|蘆屋道満大内鑑 葛の葉子別れ
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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3 | 絵金 | 蘆屋道満大内鑑 葛の葉子別れ | ー | 前期 | 二曲一隻屏風 |
丸い窓の外には葛の葉の故郷である信太の森が描かれています。
以前、スケッチしていた信太森葛葉稲荷神社かもしれません。
歌舞伎の演目に詳しくない為、知っている情報が出てくると嬉しいです。
絵金|播州皿屋敷 鉄山下屋敷【落書き】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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16 | 絵金 | 播州皿屋敷 鉄山下屋敷 | ー | 後期 | 二曲一隻屏風 |
有名な播州皿屋敷です。
お菊さんが幽霊になって皿を数えるシーンだけが印象的ですが、大まかな流れは下記です。
この絵はお菊に鉄山の首を出す場面です。
不気味さや、怖さを感じる表情が多い絵金の絵ですが、この絵の三平はとても綺麗な顔をしています。
役割が正義側ということもあるでしょうが、ギャップがかえって印象的でした。
絵金の中で一番イケメンかも!?
絵金|東山桜荘子 佐倉宗吾子別れ
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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21 | 絵金 | 東山桜荘子 佐倉宗吾子別れ | ー | 前期 | 二曲一隻屏風 |
河田小龍の作との説もあるそうです。
言われて見ると、表情や衣文の描き方が他の絵と違うような気がしないでもない。
絵金|伽羅先代萩 御殿【落書き】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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7 | 絵金 | 伽羅先代萩 御殿 | ー | 前期 | 二曲一隻屏風 |
「伊達騒動」を題材にした演目で、栄御前が幼い当主の鶴千代に毒入りのお菓子を食べさせようとする場面です。
着物の柄には髑髏が描かれています。
髑髏模様は国芳などの浮世絵でも定番の表現ですね。
絵金|絵馬台の屏風
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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33 | 絵金 | 仮名手本忠臣蔵 判官切腹 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
34 | 絵金 | 伽羅先代萩 御殿 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
35 | 絵金 | 妹背山婦女庭訓 吉野川 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
36 | 絵金 | 嬢景清八島日記 日向島 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
37 | 絵金 | 加賀見山旧錦絵 鶴岡八幡 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
38 | 絵金 | 伊賀越道中双六 岡崎 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
39 | 絵金 | 近江源氏先陣館 盛綱陣屋 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
40 | 絵金 | 船弁慶 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
47 | 絵金 | 蝶花形名歌島台 小坂部館 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
48 | 絵金 | 敵討優曇華亀山 赤堀屋敷 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
祭りの絵馬台が再現されていて、良い雰囲気の中で見れました。
よく見ると船弁慶の右下の人が吐いてました。
絵金|手長足長絵馬台
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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41 | 絵金 | 岸姫松轡鑑 朝比奈上使 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
42 | 絵金 | 蘆屋道満大内鑑 葛の葉子別れ | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
43 | 絵金 | 由良湊千軒長者 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
44 | 絵金 | 絵本太功記 杉の森とりで | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
45 | 絵金 | 玉藻前曦袂 道春館 | ー | 通期 | 二曲一隻屏風 |
手長足長を調べると、悪天候を招く妖怪らしいので、晴天を気がする目的もあったのかも。
絵金|図太平記実録代忠臣蔵 大序(垣間見)
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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49 | 絵金 | 図太平記実録代忠臣蔵 大序(垣間見) | ー | 前期 | 絵馬提灯 |
このシリーズは青(藍)が印象的でした。
グラデーションが効いていて綺麗です。
絵金|釜淵双級巴
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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65 | 絵金 | 釜淵双級巴 第五 | ー | 通期 | 絵馬提灯 |
80 | 絵金 | 釜淵双級巴 第二十一 | ー | 通期 | 絵馬提灯 |
82 | 絵金 | 釜淵双級巴 第二十三 | ー | 通期 | 絵馬提灯 |
83 | 絵金 | 釜淵双級巴 第二十四 | ー | 通期 | 絵馬提灯 |
84 | 絵金 | 釜淵双級巴 第二十五 | ー | 通期 | 絵馬提灯 |
85 | 絵金 | 釜淵双級巴(下絵) 第十五 | ー | 後期 | 紙本墨絵 |
京都の島原に来た場面です。
島原は行ったことがあるので、載せておきます。
首が飛んだり、落ちたりはよくありますが、顔の一部分だけは珍しい気がしました。
目がまだ動きそうで、生々しい。
最後は有名な釜茹の場面です。
まさか茹で上がり後が描かれるとは思いませんでした。
「煮えてなんぼのォ~」と言いたくなる所ですが、うーん、気持ち悪い。
ちなみに、下書きも展示されています。
枚数や場面自体も変わっていたりしますが、比較してみるのも面白いです。
下記が「釜淵双級巴 第二十四」の下書きです。
構図が変わってますね。
近江源氏先陣館 盛綱陣屋【落書き】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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95 | 絵金 | 近江源氏先陣館 盛綱陣屋 | ー | 後期 | 横幟 |
佐々木盛綱は源頼朝に使えた武将です。
時代的に鉄砲はまだないはずですが、「近江源氏先陣館」は江戸時代に描かれた話なので、時代考証は適当ですね。
絵の横に絵金の俳句が書かれています。
俳句の内容を見ると、端午の節句用の幟のようです。
「菖蒲打 まさりおとりも なかりけり 友竹」
優り劣りも無い、というのは現代で言う平等主義にも見えますが、そんな難しい話では無さそうですね。
単純に勝ち負けを気にせず楽しんでいる、という優しい俳句に見えます。
・菖蒲打
端午の節句に行われる、子供の遊び。
菖蒲の葉を編んで棒のようにして、地面にたたきつけて音の大きさを競う。
河田小龍|義経千本桜 加賀見山旧錦絵【落書き】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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96 | 河田小龍 | 義経千本桜 加賀見山旧錦絵 | 1857 | 前期 | 横幟 |
石垣の横に描かれていた船が黒船みたいだったので、気になりました。
黒船来航が1853年なので、知った上で描いてそう。
以上
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