あべのハルカスで開催されている広重の特別展です。
7/20に前期、8/16に後期を見てきました。
混雑もあり、2回とも約3時間かかりました。
概要
展覧会 | 期間 | YouTube |
---|---|---|
[特別展] 広重 ―摺の極― | 2024/07/06 ~ 2024/09/01 前期:07/06~08/04 後期:08/06~09/01 | ■ |
歌川広重の初期から晩年の作品まで集めた大規模な展覧会です。
普段は見れない貴重な作品も多く展示されています。
展示品の殆どはコレクターのジョルジュ・レスコヴィッチ氏の所蔵品です。
初摺、珍しい摺があり、質の良い物が揃っています。
全部で338点あり、前期と後期で完全入替になります。
エレベータ横に撮影スポットがあります。
「東海道五拾三次 日本橋 朝之景」です。
会場の入り口横です。
左は「月に雁」(後期)です。
右上は「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」(前期)、右下は「東海道五拾三次之内箱根 湖水図」(後期)です。
広重が10歳の頃の絵を以前見たことがあるので、その時の記事を参考に載せておきます。
巡回展/関連の展覧会
<巡回展>
・なし
<関連の展覧会>
展覧会 | 期間 | 美術館 | 都道府県 |
---|---|---|---|
[特別展] レスコヴィッチコレクションの摺物 ―パリから来た北斎・広重・北渓・岳亭― | 2024/07/09〜2024/09/01 | 大和文華館 | 奈良 |
レスコヴィッチコレクションの展覧会が同時期に開催中です。
※「広重 ―摺の極―」の半券提示で割引あり
展覧会 | 期間 | 美術館 | 都道府県 |
---|---|---|---|
[特別展] 六十余州名所図会 ―広重と巡る日本の風景― | 2024/06/30〜2024/08/25 | 和泉市久保惣記念美術館 | 大阪 |
「六十余州名所図会」全70点の展覧会が同時期に開催中です。
あべのハルカスの特別展では合計6点のみの展示です。
展覧会 | 期間 | 美術館 | 都道府県 |
---|---|---|---|
[特別展] 「東海道五十三次」で旅気分 ―富士に琳派に若冲も― | 2024/06/09〜2024/12/08 前期:06/09~09/12 後期:09/13~12/08 | 岡田美術館 | 神奈川 |
「東海道五十三次」全55点の特別展が12月まで開催中です。
※前期と後期で展示替えあり
展覧会 | 期間 | 美術館 | 都道府県 |
---|---|---|---|
[特別展] 広重ブルー | 2024/10/05〜2024/12/08 前期:10/05~11/04 後期:11/09~12/08 | 太田記念美術館 | 東京 |
広重の特別展が10月から開催予定です。
※前期と後期で展示替えあり
広重がメインの美術館です。
美術館 | 都道府県 |
---|---|
静岡市東海道広重美術館 | 静岡 |
中山道広重美術館 | 岐阜 |
那珂川町馬頭広重美術館 | 栃木 |
広重美術館 | 山形 |
感想
東都司馬八景など、八景もの【落書】
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
8 10 9 11 | 外と内姿八景 ろうかの暮雪・座敷の夕せう 格子の夜雨・まかきの情らむ 桟橋の秋月・九あけの妓はん 田甫の落雁・衣々の晩鐘 | 1821-23 | 前期 後期 | 第1章 レスコヴィッチ氏蔵 |
111 113 112 114 | 金沢八景 瀬戸秋月 称名晩鐘 小泉夜雨 野島夕照 | 1835-36 | 前期 後期 | 第3章 レスコヴィッチ氏蔵 |
145-152 | 江戸近郊八景之内 吾嬬杜夜雨/玉川秋月 池上晩鐘/行徳帰帆 芝浦晴嵐/小金井橋夕照 羽根田落雁/飛鳥山暮雪 | 1836-37 | 後期 | 第3章 レスコヴィッチ氏蔵 |
161 162 163 164 | 東都司馬八景 田町秋月 愛宕山暮雪 赤羽根之夜雨 高輪帰帆 | 1838-41 | 前期 後期 | 第3章 レスコヴィッチ氏蔵 |
79,80 81 82 83,84 85 86 87,88 89,90 | 近江八景之内 石山秋月 瀬田夕照 粟津晴嵐 三井晩鐘 唐崎夜雨 矢橋帰帆 堅田落雁 比良暮雪 | 1835 | 後期 | 第2章 原安三郎コレクション 80,84,89はレスコヴィッチ氏蔵 |
212,214 216,218 213,215 217,219 | 近江八景 石山寺秋景/粟津の松原 唐崎の一ッ松/堅田の浦 瀬田の長橋/三井正法寺 矢橋の渡口/比良の山道 | 1852 | 前期 後期 | 第4章 レスコヴィッチ氏蔵 |
「八景」は優れた風景を八か所選んだもので、色んな場所にあります。
北宋時代に選ばれた瀟湘八景が元になっており、絵画にも良く描かれています。
・瀟湘八景と広重の八景
瀟湘八景 | 外と内姿八景 | 金沢八景 | 江戸近郊八景之内 | 東都司馬八景 | 近江八景之内 近江八景 |
---|---|---|---|---|---|
瀟湘夜雨 | 格子の夜雨 | 小泉夜雨 | 吾嬬杜夜雨 | 赤羽根之夜雨 | 唐崎夜雨 唐崎の一ッ松 |
平沙落雁 | 田甫の落雁 | 平潟落雁 | 羽根田落雁 | 御殿山之落雁 | 堅田落雁 堅田の浦 |
煙寺晩鐘 | 衣々の晩鐘 | 称名晩鐘 | 池上晩鐘 | 山縁山晩鐘 | 三井晩鐘 三井正法寺 |
山市晴嵐 | まかきの情らむ | 洲崎晴嵐 | 芝浦晴嵐 | 白銀晴嵐 | 粟津晴嵐 粟津の松原 |
江天暮雪 | ろうかの暮雪 | 内川暮雪 | 飛鳥山暮雪 | 愛宕山暮雪 | 比良暮雪 比良の山道 |
漁村夕照 | 座敷の夕せう | 野島夕照 | 小金井橋夕照 | 神明夕照 | 瀬田夕照 瀬田の長橋 |
洞庭秋月 | 桟橋の秋月 | 瀬戸秋月 | 玉川秋月 | 田町秋月 | 石山秋月 石山寺秋景 |
遠浦帰帆 | 九あけの妓はん | 乙艫帰帆 | 行徳帰帆 | 高輪帰帆 | 矢橋帰帆 矢橋の渡口 |
<外と内姿八景>
外側からの風景と内側からの風景をテレビのワイプのように描いたシリーズです。
物語性が出て面白いですね。
<金沢八景>
石川県の金沢ではなく、神奈川県の金沢です。
京浜急行電鉄の「金沢八景駅」という駅名にもなっています。
八景島の「八景」ってそういうことでしたか。
現在も地名として残る瀬戸橋辺りと野島の風景、称名寺の風景になります。
<江戸近郊八景之内>
色は青と黒を中心にしていて、落ち着いた画風のシリーズです。
「玉川秋月」の銀泥の月が印象的です。
<東都司馬八景>
No.161「田町秋月」の簡略化された狛犬が可愛い。
<近江八景之内>
摺の違いを見比べられるが面白いです。
赤を多めに使ってると夕暮れ、赤が無く黒っぽいと夜に近い印象になり、同じ構図でも時間経過を感じることができます。
「唐崎夜雨」の一本松の表現はインパクトがあります。
シルエットだけ描くことで、雨の視界の悪い感じも出てますね。
<近江八景>
晩年に近い作品で、「近江八景之内」の方が表現的には面白い。
この八景は統一感があって綺麗です。
大江山酒吞童子/猿・鶏ほか
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
12 | 江戸の花 大江山酒吞童子 | 1819 | 前期 | 第1章 レスコヴィッチ氏蔵 |
18 | 浅草奥山貝細工 猿・鶏ほか | 1820 | 前期 | 第1章 レスコヴィッチ氏蔵 |
籠細工の酒呑童子と、貝細工の猿と鶏です。
網目のような模様で描かれてます。
ひな鶴の舞【落書】
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
19 | ひな鶴の舞 | 1819 | 前期 | 第1章 レスコヴィッチ氏蔵 |
アイヌ民族の伝統舞踊です。
サロルンリムセ(鶴の舞)というのがあるようです。
漫画「ゴールデンカムイ」の11巻(108話)にも少し出てきます。
兎の花押のようなものが気になりました。
どういう意味かはわかりません。
やうきひ桜/小町桜
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
22 23 | やうきひ桜 小町桜 | 1822-24 | 後期 | 第1章 レスコヴィッチ氏蔵 |
楊貴妃と小野小町が和歌とともに描かれた作品です。
空摺、銀泥で模様が表現されていて、意外と凝ってます。
東都名所
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
36 37 38 39 | 東都名所 高輪之明月 佃島初郭公 芝浦汐干之図 両国之宵月 | 1831-32 | 前期 | 第2章 レスコヴィッチ氏蔵 |
「一幽斎描き東都名所」と呼ばれるシリーズで、本格的に風景画を描いた最初の作品です。
- 高輪之明月
中央に雁を並べた大胆な構図。見晴らしの良い風景が気持ち良い絵です。 - 佃島初郭公
こちらは中央にマストが並んでいるのが印象的。 - 芝浦汐干之図
帆が縞模様のようになっているのが珍しい。 - 両国之宵月
月が主役ですが、橋脚や雲に隠れてひっそりとした雰囲気が出てます。
弓張月/甲陽猿橋之図
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
55 | 月二拾八景之内 弓張月 | 1832-35 | 前期 | 第2章 レスコヴィッチ氏蔵 |
171 172 | 甲陽猿橋之図 富士川上流雪景 | 1841-42 | 前期 後期 | 第3章 レスコヴィッチ氏蔵 |
「弓張月」、「富士川上流雪景」の橋も猿橋みたいな構造をしてます。
No.171,172はNo.337,338の幕絵を描く為に甲府を訪れていた頃に描かれたようですが、構図は広重の創作っぽいですね。
・日本三名橋
日本橋、錦帯橋、眼鏡橋
・日本三奇橋
錦帯橋、猿橋、愛本橋(*1)/木曽の桟(*2)/かずら橋
*1 愛本橋:明治に近代的な橋に架け替え
*2 木曽の桟:現在は石垣のみ
京都名所之内
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
97 98 | 京都名所之内 金閣寺 あらし山満花 | 1834-35 | 前期 | 第2章 レスコヴィッチ氏蔵 |
- 金閣寺
登っている人がいますね。 - あらし山満花
花弁の浮かぶ川が銀河のようで綺麗です。
木曽海道六拾九次之内
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
115,117,119 121,123,125 127,129,131 116,118,120 122,124,126 128,130,132 | 木曽海道六拾九次之内 高崎/小田井/あし田 和田/洗馬/贄川 上ヶ松/中津川/大久手 軽井沢/望月/長久保 下諏訪/本山/宮ノ越 須原/大井/鳥居本 | 1836-37 | 前期 後期 | 第3章 レスコヴィッチ氏蔵 |
渓斎英泉が24図、広重が47図を分担したシリーズ。
- 高崎
正面の山は赤城山。登場人物がコミカル。 - 小田井
山の上の空に薄く夕陽っぽいものも見えます。 - あし田
木の配置がリズミカル。 - 和田
山肌の模様がリズミカル。 - 洗馬
広重は風の表現が上手い。 - 贄川
馬の背中に三十四と書かれた布があります。
この絵が34番目でした。 - 上ヶ松
水が三角形。全体的に抽象的な表現が多いです。 - 中津川
脚絆の色に濃い藍が混じるのはこのコレクションのみだそうです。 - 大久手
素材は少ないが、岩が生えているかのよう。
非現実的で、シュルレアリスム感もあります。
- 軽井沢
煙の所だけ明かりに照らされたかのように葉を緑にしているのは面白い表現です。 - 望月
長野県に望月宿。名前にかけて満月が描かれてます。 - 長久保
子供が犬に乗っていますね。
長野県には川上犬という日本犬がいますが、大型ではないので違うかな。 - 下諏訪
諏訪は温泉地でもありますが、内湯だけのようです。 - 本山
画面を横切る松が印象的です。
焚火をやると煤が出そう。 - 宮ノ越
背景のシルエットが影絵みたいで、手前の絵と違和感を感じます。 - 須原
人気のある広重の雨。 - 大井
山の三角や笠の丸の配置が良い。 - 鳥居本
見晴らしが良い。でも、そこに座るのは怖い。
場所は滋賀県の彦根近くで、遠くに見えるのは琵琶湖かな。
本朝名所
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
135 142 | 本朝名所 天橋立 大坂天保山 | 1837 | 前期 | 第3章 レスコヴィッチ氏蔵 |
- 天橋立
斜めに並ぶ舟と、角度の違う砂州のバランスが面白い。 - 大坂天保山
大阪にある人工の山で、今は海遊館などがある観光スポット。
日本で2番目に低い山(標高4.53m)なので、絵は誇張しているのかと思いましたが、作られた当初は20m位あったそうです。
六十余州名所図会
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
180 182 184 181 183 185 | 六十余州名所図会 上野 榛名山雪中 播磨 舞子の浜 阿波 鳴門の風波 出雲 大社ほとほとの図 備中 豪渓 対馬 海岸夕晴 | 1853 1853 1855 1853 1853 1856 | 前期 後期 | 第4章 レスコヴィッチ氏蔵 |
- 阿波 鳴門の風波
波の表現が良くなってますね。
北斎の波の影響があるようです。
約20年前に「神奈川沖浪裏」を描いたのだから凄い。 - 対馬 海岸夕晴
虹が大きく描かれています。
空が黒と青の淡いグラデーションで他の広重ブルーな作品とは少し違う感じです。
阿波鳴門之風景/武陽金沢八勝夜景/木曽路之山川
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
221 222 223 | 阿波鳴門之風景 武陽金沢八勝夜景 木曽路之山川 | 1857 | 前期 後期 後期 | 第4章 レスコヴィッチ氏蔵 |
鳴門=花、金沢=月、木曽路=雪、で雪月花の三部作と言われています。
鳴門の渦を花に見立てて、渦が沢山あるのも花だからかな。
雪中椿に雀【落書】
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
232 | 雪中椿に雀 | 1832-35 | 前期 | 第5章 レスコヴィッチ氏蔵 |
正面を向いている雀の顔が面白い。
ものまねタレントのりんごちゃんがやるサンプラザ中野くんに似ている気がします。
月に松上の木莵【落書】
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
239 | 月に松上の木莵 | 1832-35 | 前期 | 第5章 レスコヴィッチ氏蔵 |
目を閉じたミミズクが可愛いです。
月に雁
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
240 | 月に雁 | 1832-35 | 後期 | 第5章 レスコヴィッチ氏蔵 |
入口横にも飾られていた展覧会を代表する作品の一つ。
構図が圧倒的にカッコいいです。
背景はシンプルですが広重ブルーで雲と月が綺麗に描かれています。
自分は馴染みがあるわけではないですが、切手のデザインに使われたことでも知られているようです。
甲府道祖神祭幕絵
No | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
337 338 | 甲府道祖神祭幕絵 東都名所 目黒不動之瀧 東都名所 洲さき汐干狩 | 1841 | 前期 後期 | 第8章(展示は第4章) 山梨県立博物館 |
縦1.8m、横11~16mの大きな幕絵です。
甲府城下では祭りの時に幕絵を飾る風習があったそうです。
「目黒不動之瀧」は初代広重、「洲さき汐干狩」は初代広重と、二代広重(初代の門人)の補作と言われています。
貴重な作品であることは間違いないですね。
この大きさだと展示も難しいので、巡回展でも中々見れなさそうです。
以上
コメント