大阪中之島美術館の特別展の感想です。
大阪で活躍した女性日本画家に注目した展覧会です。
概要
展覧会 | 期間 | YouTube |
---|---|---|
[特別展] 決定版! 女性画家たちの大阪 | 2023/12/23 ~ 2024/02/25 | PR動画 |
[特別展] Osaka Directory 6 supported by RICHARD MILLE 木原結花 | 2024/01/27 ~ 2024/02/25 2階 多目的スペース(無料) |
決定版! 女性画家たちの大阪
明治末期から昭和前期の間の作品が全部で186点、前期134点、後期137点に分けて展示されます。
全国的にみても大阪は女性画家が多く活躍していたようです。
今回の展示では59人の女性画家が登場します。
第1章は島成園のみで、41点あります。
第2章は「女四人の会」ですが、島成園は1点だけで、展示は他の3人が中心です。
第3章は南画(文人画)と花鳥画です。
南画は画壇や階級のようなものが無かったので、女性も活躍しやすかったようです。
河邊青蘭は沢山の門下を輩出しており、大阪を代表する南画家です。
師匠の橋本青江、門下の池田青渓、渡辺花仙と合わせて見れるのは良いですね。
第4章は四天王寺の行事や祭りなど、大阪の風俗を描いた作品が集まってます。
第5章では大正後期以降の次世代の女性画家達の作品が集まってます。
第5章と第4章の最後にある山内直枝の「百鬼夜行絵巻」は写真撮影OKでした。
垂れ幕と展示室の入り口前にある撮影スポットです。
チラシの表紙にも使われた島成園の「桜花美人」です。
木原結花(Osaka Directory)
2階の多目的スペースで展示されています。
関西の若手アーティストを紹介するシリーズで、2022年から開催されています。
無料で気軽に見れます。
年度 | 期間 | |
---|---|---|
2022 | Osaka Directory 1 赤鹿 麻耶 Osaka Directory 2 貴志 真生也 Osaka Directory 3 supported by RICHARD MILLE 遠藤薫 | 2022/08/06~2022/09/11 2022/11/23~2022/12/25 2023/01/20~2023/02/26 |
2023 | Osaka Directory 4 supported by RICHARD MILLE 小谷 くるみ Osaka Directory 5 supported by RICHARD MILLE 肥後 亮祐 Osaka Directory 6 supported by RICHARD MILLE 木原 結花 | 2023/11/18~2023/12/17 2023/12/23~2024/01/21 2024/01/27~2024/02/25 |
巡回展
・なし
感想「女性画家たちの大阪」
作品は沢山ありますが、島成園が42点と圧倒的に多いです。
島成園門下が20点なので、島成園派閥だけで約半分ですね。
自分は島成園を好きになったのが去年なので、ここまで注目される画家とは知らなかった。
(去年より前にも見たことあるはずですが、その時は印象に残らず)
島成園の三大名作も揃っているので、島成園の回顧展としても楽しめます。
・No.13「おんな(原題・黒髪の誇り)」
・No.14「無題」
・No.17「伽羅の薫」
全体的に見ると、大正前期までの作品が好みでした。
大正グロテスクや現代に近い絵は画風が好みでないものが増えます。
まぁ、色々見れたので、適度に刺激もあって丁度良かったかな。
島成園|萩美人【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
6 | 島成園 | 萩美人 | 大正前期 | 後期 | 第1章 |
鼻筋の影が少し黒っぽかったり、他とちょっと違う感じがした。
単純に美人だとな、思った。
島成園|おんな(原題・黒髪の誇り)
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
13 | 島成園 | おんな(原題・黒髪の誇り) | 大正6年 | 通期 | 第1章 |
三大名作の一つ。
もやのような黒髪が幽霊っぽくて、円山応挙の「幽霊図」を思い出した。
着物に描かれているお面も霊的なものを連想します。
島成園|無題
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
14 | 島成園 | 無題 | 大正7年 | 通期 | 第1章 |
三大名作の一つ。
自身の姿とも言われています。
確かに似ている気はします。
顔の痣や、黒い着物が暗い雰囲気を感じさせます。
島成園|伽羅の薫
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
17 | 島成園 | 伽羅の薫 | 大正9年 | 通期 | 第1章 |
三大名作の一つ。
京都の島原にある角屋の紫君太夫と、太夫に扮した母をモデルにしたそうです。
好みかどうかは置いといて、見た瞬間に迫力で圧倒されました。
顔はモディリアーニのように面長で、後光が差して直立する姿は宗教画や神話画のようにも見えます。
コントラストの強い色彩は大正グロテスクの感じもありますね。
大正9年は本人が望まぬ結婚など、環境の変化があり、絵にも影響があったようです。
以降は画風が変わっていくので、好みが分かれる所ですね。
島成園|紫式部之図
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
30 | 島成園 | 紫式部之図 | 大正後期–昭和前期 | 後期 | 第1章 |
十二単で描かれることが多いですが、これは十二単の下に来ている長袴の姿で描かれています。
筆を持っているので、執筆中の様子だろうか。
人前に出ることがなければ、作業中はこの服装の方が現実的ですね。
島成園|囃子
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
31 | 島成園 | 囃子 | 昭和2年 | 通期 | 第1章 |
周りの色が濃いので、着物の白が際立っています。
不気味さは無いですね。
昭和に入って、大正グロテスクは終わったかな。
島成園|旅芸人
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
36 | 島成園 | 旅芸人 | 昭和7年 | 後期 | 第1章 |
絵の印象がかなり変わりましたね。
色がシンプルになって、全体的に立体感が少ない感じです。
ちょっと物足りないかな。
島成園|西鶴のおまん
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
42 | 島成園 | 西鶴のおまん | 大正5年 | 通期 | 第2章 |
井原西鶴の代表作「好色五人女」の人物です。
目に色気があります。
やはり大正9年より前の方が好みかな。
岡本更園|秋のうた
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
44 | 岡本更園 | 秋のうた | 大正3年 | 通期 | 第2章 |
西洋画にありそうな絵です。
着物や後ろの柘榴は平面的に描いているので、女性の顔が引き立っているように見えます。
松本華羊|少女/投扇興
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
68 | 松本華羊 | 少女 | 大正前期 | 後期 | 第2章 |
70 | 松本華羊 | 投扇興 | 大正5年頃 | 後期 | 第2章 |
大人の女性より少女の方が良かったかな。
投扇興も面白い遊びですね。
手軽にできる遊びなのでもっと広まっても良さそう。
波多野華涯|西洋草花図
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
76 | 波多野華涯 | 西洋草花図 | 大正14年 | 通期 | 第3章 |
西洋画のように色鮮やかです。
守住周魚|仁徳帝煙望図
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
101 | 守住周魚 | 仁徳帝煙望図 | 明治–大正時代 | 通期 | 第3章 |
仁徳天皇がかまどの煙が立って賑わっていることを喜んでいるシーンです。
平安より前の時代はよく平安風に描かれることは多いですが、仁徳天皇は流石に古すぎる気がする。
他の画家も同じように描いていますが・・・。
多田千浪|春宵
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
158 | 多田千浪 | 春宵 | 大正後期–昭和前期 | 後期 | 第5章 |
赤と黒の組み合わせは大正時代の大阪でよく使われたそうです。
改めて他の作品も見てみると、確かに多いです。
下記の絵も赤と黒を使ってます。
三露千鈴の「殉教者の娘」(No.167)もそうですね。
部分的なものを含めると、他にも沢山あります。
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
127 | 秋田成香 | 女童 | 大正後期 | 後期 | 第5章 |
129 | 伊東成錦 | 羽子板 | 大正後期 | 通期 | 第5章 |
131 | 平山成翠 | 童女 | 大正時代 | 後期 | 第5章 |
137 | 宮本成操 | 春 | 大正–昭和時代 | 後期 | 第5章 |
三露千鈴|化粧/殉教者の娘
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
165 | 三露千鈴 | 化粧 | 大正後期 | 後期 | 第5章 |
167 | 三露千鈴 | 殉教者の娘 | 大正15年 | 後期 | 第5章 |
病気の為、22歳の若さで亡くなられました。
良い感じの絵が多かったので、年齢を重ねた作品も見てみたかったですね。
四夷星乃|少女/夏美人
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
170 | 四夷星乃 | 少女 | 大正–昭和前期 | 通期 | 第5章 |
172 | 四夷星乃 | 夏美人 | 大正–昭和前期 | 後期 | 第5章 |
北野恒富門下の「雪月花星」の一人。
少女は近代的な画風で、夏美人は伝統的な画風です。
夏美人の女性は、小柄で華奢な感じが鈴木春信っぽい感じです。
別役月乃|文使い
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
179 | 別役月乃 | 文使い | 大正時代 | 通期 | 第5章 |
北野恒富門下の「雪月花星」の一人。
歩いているのではなく、小走りの感じが出ています。
橋本花乃|七夕/舞妓
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
173 | 橋本花乃 | 七夕 | 昭和5–6年頃 | 通期 | 第5章 |
175 | 橋本花乃 | 舞妓 | 大正後期–昭和前期 | 後期 | 第5章 |
北野恒富門下の「雪月花星」の一人。
短冊に書いているものは下記で、願い事は書いていませんでした。
「七夕」、「天の川」、「夏まつり」、「をりひめさま」、「二星」。
去年、見てましたね。
そして、同じこと考えてました。
青木豊園|花見どき
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
186 | 青木豊園 | 花見どき | 大正–昭和時代 | 通期 | 第5章 |
花見に行く前に長襦袢に半襟を縫い付けています。
「園」が付くので、上村松園と関連があるかもしれないと言われていますが、詳細は不明です。
島成園|自画像
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
24 | 島成園 | 自画像 | 大正13年 | 通期 | 第5章(最後) |
日本画の自画像は見た記憶が無かった。
大正時代から描かれるようになったようです。
目の周りには隈があり、暗い雰囲気です。
美化とかは無く、リアルな姿を描いていそうです。
感想「木原結花」
No | 作品名 | 年 |
---|---|---|
1 | 行旅死亡人(N34°38’1”E135°6’17”) | 2019 |
2 | 行旅死亡人(兵庫県姫路市飾磨新西防波堤灯台付近) | 2017 |
3 | 行旅死亡人 | 2016 |
4 | そこにいるはずだったあなたの。 世界にはない現象であなたの形を作成する | 2023 |
5 | そこにいるはずだったあなたの。 世界が遠い | 2023 |
6 | そこにいるはずだったあなたの。 世界にはない現象であなたの形を作成するためのプロセス | 2023 |
7 | そこにいるはずだったあなたの。 世界にはない現象であなたの形を作成するためのプロット | 2024 |
行旅死亡人に着目した作品。
写真、映像、樹脂で作られた立体作品がありました。
・行旅死亡人
行旅とは旅行中。
旅行中に死亡し、引き取り手がいない死者。
ただし、身元不明の遺体も行旅死亡人と見なされている。
現代芸術は難しいですね。
とりあえず、「行旅死亡人」については勉強になりました。
以上
コメント