京都文化博物館の感想です。
京都にある星野画廊のコレクションからの展示です。
概要
展覧会 | 期間 |
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[特別展] 発掘された珠玉の名品 少女たち -夢と希望・そのはざまで 星野画廊コレクションより | 2023/07/15 ~ 2023/09/10 |
[企画展(総合展示)] いけばなの世界展 | 2023/08/19 ~ 2023/10/15 |
[企画展(総合展示)] 徳川家康とその時代 | 2023/08/11 ~ 2023/10/01 |
京都にある星野画廊のコレクションから「少女」をテーマに集められた展示です。
「少女」の定義は広めの年齢で考えられています。
明治から昭和の日本画、西洋画になり、忘れられた画家や知られていない画家の作品を多く取り扱っており、見たことない画家の絵(名前不明も含む)が沢山ありました。
・星野画廊
多くの埋もれた作家や無名の作家を発掘してきた画廊で、岡本神草、甲斐荘楠音などもいち早く紹介してきた。
年 | 内容 |
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1971 | 星野桂三・万美子夫妻が画商活動を開始 「アートコンサルタント星野」として活動 |
1973 | 「星野画廊」を開設 |
1978 | 企画展「忘れられた画家シリーズ」をスタート 明治、大正、昭和前期の埋もれた画家を紹介 |
1982 | 東山区神宮道に移転 |
館内では可愛らしい少女たちがお出迎え。
右:作者不詳(柳江)「夏苑の少女」
巡回展
感想
近現代になると画風が好みでなくなる為、前半の方が好きな作品が多かったです。
去年(2022年)から大正辺りの画家を見る機会が増えた気がします。
再評価されているタイミングかもしれません。
展示の最後には気になった作品の投票(シールを貼る)が出来ます。
9/3時点では上位には下記の作品がありました。
30個毎(?)位で台紙を上から貼っていき、台紙に何枚目か書いてありました。
下記にその数の上位を抜粋しました。
台紙の数 | No/作家/作品 ※リンクは同ページ内の関連個所 |
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7枚目 | 96.島崎鶏二「朝」 |
6枚目 | 37.作者不詳(数馬)「窓辺御簾美人」 |
5枚目 | 5.笠木治郎吉「花を摘む少女」 106.太田喜二朗「花摘図」 |
島崎鶏二の作品は好みでなかったので、流したのですが人気があって驚いた。
好みは人それぞれですね。
島崎鶏二の父はあの島崎藤村でした。
藤村のイメージは正直良くないですが、精神的に不安定な父を秘書としてよく支えたそうです。
まぁ、自分は「窓辺御簾美人」も良かったですが、笠木治郎吉が一番でした。
[2023/10/17 追記]
9/10のtwetterにて最終結果が出てました。
順位に変更はありませんでした。
第1位 島崎鶏二「朝」
第2位 作者不詳(数馬)「窓辺御簾美人」
第3位 笠木治郎吉「花を摘む少女」
第4位 太田喜二郎「花摘図」
佐久間文吾|団扇をもつ少女
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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2 | 佐久間文吾 | 団扇をもつ少女 | 1888 | – | 第1章 明治の少女たち |
全体的に黒っぽい人物画。
本多錦吉郎の元で学んだとのこと。
本多錦吉郎が兵庫県立美術館にある「羽衣天女」で印象に残っていたのでピックアップしてみました。
佐久間文吾は初めてかな、と思いましたが、下記の絵は見覚えがあります。
直接見たか、画像で見たかは覚えてないですが…。
笠木治郎吉|花を摘む少女 など
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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5 | 笠木治郎吉 | 花を摘む少女 | 1897-1912 | – | 第1章 明治の少女たち |
6 | 笠木治郎吉 | 蓮池の少女 | 1897-1912 | – | 第1章 明治の少女たち |
7 | 笠木治郎吉 | 筏師の娘 | 1897-1912 | – | 第1章 明治の少女たち |
8 | 笠木治郎吉 | 網を縫う漁師の娘 | 1897-1912 | – | 第1章 明治の少女たち |
色鮮やかで、写実的だった為、油彩画かと思ったら、水彩画でした。
初めて見た画家でしたが、明治時代にこんな水彩画家がいたとは・・・。
なんだか向井潤吉の絵と一緒に見たくなりました。
笠木治郎吉の子孫が経営しているかさぎ画廊で紹介動画がありました。
石井金陵|妙なる調べ
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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13 | 石井金陵 | 妙なる調べ | 1901-1912 | – | 第1章 明治の少女たち |
龍に乗ってヴァイオリンを弾いています。
日本画でヴァイオリンは珍しい。
北野恒富|初姿
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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15 | 北野恒富 | 初姿 | 1926-1935 | – | 第2章 四季のうつろいの中で |
目が小さくて、素朴な感じです。
特別展「大阪の日本画」で見た時は大人の女性が多かったからか、雰囲気が違う印象です。
田代正子|娘
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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21 | 田代正子 | 娘 | 1940 | – | 第2章 四季のうつろいの中で |
着物、背景、桜と全体的に薄紅や桃の優しい色で構成されていて可愛らしさが引き立っています。
作者不詳(数馬)|窓辺御簾美人
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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37 | 作者不詳(数馬) | 窓辺御簾美人 | 1926-1935 | – | 第2章 四季のうつろいの中で |
「描表装」と呼ばれる表装も絵で描く技法が使われています。
絵が紙から出ているような表現が可能で、だまし絵のようで面白いです。
島成園|きぬた
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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44 | 島成園 | きぬた | 1912-1920 | – | 第6章 慈しむ母として |
特別展「大阪の日本画」で気になり始めた島成園の作品です。
この画はそんなに惹かれたわけではないですが、島成園の絵が見れたのは嬉しい。
岡本神草|拳の舞妓
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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54 | 岡本神草 | 拳の舞妓 | 1922 | – | 第3章 大正の個性派画家たち |
展覧会のチラシの表紙にも使われた作品です。
(ここだけ撮影可でした。)
一見、不気味そうに見えますが、よく見ると表情は穏やかな気がします。
・拳
狐拳というお座敷遊び。
じゃんけんのように狐、猟師、庄屋を手で表して遊ぶ。
この絵は狐。
神草の代表作で同じ画題の「拳を打てる三人の舞妓」があります。
この作品は逸話があって、TV東京の「美の巨人たち」でも特集されていました。
3人揃っているのは未成、草稿、習作、完成品の4種類です
年 | 内容 |
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1919 | 「拳を打てる三人の舞妓(未成)」 「拳を打てる三人の舞妓|部分草稿1」 「拳を打てる三人の舞妓|部分草稿」2 「拳を打てる三人の舞妓|草稿断片1」 「拳を打てる三人の舞妓|草稿断片2」 「拳を打てる三人の舞妓|草稿断片3」 「拳を打てる三人の舞妓|草稿」(1919-21) ⇒全て京都国立近代美術館の所蔵 第2回国展への出展を目指すが間に合わず。 |
1920 | 「拳を打てる三人の舞妓の習作」 ⇒国展に出品 ⇒京都国立近代美術館の所蔵 第2回国展への出展を目指すが間に合わない為、 中央のみを切り取って出品。 |
1921 | 「拳を打てる三人の舞妓」 ⇒第3回帝展に出品 ⇒未発見 |
1922 | 「拳の舞妓」(今回の作品) ⇒星野画廊の所蔵 |
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1987 | 遺族の家で「習作」の残部が発見 元に復元 |
2008 | 「未成」が発見 |
画像が見れます
甲斐荘楠音|サイダーを飲む女
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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56 | 甲斐荘楠音 | サイダーを飲む女 | 1930-1934 | – | 第2章 四季のうつろいの中で |
強いクセは無く、広告にでも使われそうなスッキリした作品。
甲斐荘楠音は特別展を見に行ったので、かなり印象に残っています。
気になった点はサイダーの色が黄色だったこと。
ラムネが昔はレモンの香りを付けて、黄色料を入れていたようなので、そうなのかも。
あと、ストローの素材。
日本のストローは1901年に岡山県で麦稈(麦藁を干した物)を使ったのが始まりだそうです。
1950年代までは使われていたそうなので、絵の中のストローも麦稈と思われます。
その後、需要の増加やコストの理由から紙、プラスチックと変わって行った、とのこと。
今は紙に注目されていますが、麦稈は流石にコストがかかりそうかな。
でも、ちょっと良い店だったり、観光地の名産や、町おこしの一つとして使うのはありだと思います。
紙だと触感や臭いが気になるとか不評もあるので、麦稈だとどうだろうか。
一度使ってみたいですね。
佐治大輔|楊貴妃
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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65 | 佐治大輔 | 楊貴妃 | 1912-1926 | – | 第4章 歴史画に見る少女たち |
衣装や装飾がとても細かいです。
大きな絵で間近で見ることもできるので、細かさがよくわかります。
野田英夫|籠を持てる少女
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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69 | 野田英夫 | 籠を持てる少女 | 1932 | – | 第5章 夢見る少女たち |
人が浮いていてシャガールっぽい。
解説に「シャガール?いえいえ」とありましたが、シャガールを思わずにいられない。
安藤義茂|二人
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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77 | 安藤義茂 | 二人 | 1950 | – | 第5章 夢見る少女たち |
「刀画」という技法で描かれた作品。
版画のような独特な雰囲気でした。
・刀画
安藤義茂が考案した技法。
戦時中で油絵の絵具が手に入らなくなった為、水彩画に刃物で傷を付けて油絵のような表現をしようとした際に発見した。
戦時中に金属が使えなくなったのはよく聞く話ですが、油絵もそうだったんですね。
二世五姓田芳柳|農村のまひる
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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82 | 二世五姓田芳柳 | 農村のまひる | 1890年代 | – | 第6章 慈しむ母として |
横長の画面で人物が写実的だったので西洋画っぽく見えましたが、背景は水墨画でした。
五姓田派は明治時代に活躍した洋画家の集団でしたが、日本画の描き方も使っていたようです。
感想「いけばなの世界展」
いけばな(華道)に関する資料や道具が展示されています。
近くにはいけばな発祥の地でもある六角堂があるので、合わせて見に行くのもありですね。
生花之聞書之絵図/立花砂物図【落書】
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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7 | 毛利作右衛門/ 34世池坊専養識 | 生花之聞書之絵図 | 1697 | – | 1 立花の成立 |
10 | 大住院以信 | 立花砂物図 | 1678 | – | 1 立花の成立 |
当時のいけばなが画で描かれているのですが、TVで見たものよりもシンプルです。
剣山が描かれているわけではないですが、足元を花で隠すようなこともしていません。
流派の違いもあるでしょうが、今より花の種類も少なかったと思いますし、盆栽に近いような感じがしました。
「剣山」と言いましたが、花を固定する道具を「花留め」と言い、針を集めたいわゆる「剣山留め」は明治以降に広まったそうです。
江戸時代に使われていたのは「七宝留め」と呼ばれる丸い金具になります。
YouTubeで使い片を紹介していたので参考に載せておきます。
感想「徳川家康とその時代」
歌川国芳|和漢英勇画伝 など
No | 作家名 | 作品名 | 年 | 期間 | 備考 |
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25 | 梅亭金鵞 挿絵:一勇斎国芳 | 和漢英勇画伝 | 江戸 | – | – |
参考 | 武内確斎 挿絵:岡田玉山 | 絵本太閤記 | 1886 | – | 岡田玉山は大阪の浮世絵師 |
参考 | 元田永孚 | 幼学綱要 | 1883 | – | 明治に宮内省より発行された修身の教科書 |
徳川家康関連の資料が展示されています。
大河ドラマも家康なので、その関連かもしれません。
とりあえず国芳の名前があったので、ピックアップしときます。
あと、出品リストに無いですが、参考資料として展示されていたもが2点ありました。
和漢英勇画伝は展示されている頁で「故一勇斎国芳」と書かれていたので、国芳の死後の1861年以降に発刊されたものかな。
以上
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