【美術】特別展「京都画壇の青春」/「コレクション展」京都国立近代美術館

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京都画壇の青春
京都画壇の青春

京都国立近代美術館の特別展の感想です。
明治末期から昭和初期にかけて京都で活躍した画家達にスポットを当てた展覧会です。

概要

展覧会期間
[特別展]
開館60周年記念
京都画壇の青春
栖鳳せいほう松園しょうえんにつづく新世代たち
2023/10/13 ~ 2023/12/10
  前期:10/13~/11/12
  後期:11/14~/12/10
[企画展]
第3回コレクション展
2023/10/05 ~ 2023/12/17
  前期:10/05~/11/12
  後期:11/12~/11/14

「青春」ということで、明治末期から昭和初期に若い世代だった画家が中心になります。
一部の作品は先輩、師匠世代のものです。
竹内栖鳳は師匠世代になります。

全101点で、土田麦僊つちだばくせんがメインです。
作品数の内訳は下記です。

美術館でよく見かける年表にしてみました。
土田麦僊より上が先輩、師匠世代になります。


コレクション展では特別展と関連のある画家の作品もあるので、要チェックです。

向かいの京セラ美術館では竹内栖鳳の特別展が開催中なので、こちらもお勧めです


美術館の前にある看板です。
裏側は土田麦僊の「海女」でした。

正面にある撮影スポットです。

左側面正面右側面
[1]
[2]
[3]
[4][5]
[6]
[7]

[1]土田麦僊「罰」
[2]土田麦僊「舞妓林泉」
[3]金田和郎「水密桃」
[5]岡本神草「口紅」
[6]上村松園「舞支度」
[4][7]土田麦僊「大原女」

巡回展

・なし

感想「京都画壇の青春」

特に目当ての作品があったわけでは無いですが、色んな絵を見れて面白かったです。
明治以降の日本画なんで、近代的な画風でした。

今回の展示の注目作品は下記です。
(公式HPやチラシからピックアップ)

No作家名作品名期間備考
9土田麦僊つちだばくせん通期
19土田麦僊島の女通期ゴーギャンの影響
23土田麦僊海女通期ゴーギャンの影響
78土田麦僊舞妓林泉ぶぎりんせん通期チラシの表紙
84土田麦僊大原女おおはらめ通期
27上村松園舞仕度通期
34竹内栖鳳日稼通期
36小野竹喬おのちっきょう郷土風景通期セザンヌの影響
41野長瀬晩花のながせばんか初夏の流前期
42金田和郎かなだわろう水蜜桃通期第一回国画創作協会展で「樗牛賞ちょぎゅう  」(※)を受賞
※日本美術に造詣の深かった高山樗牛たかやまちょぎゅうに由来
43岡本神草おかもとしんそう口紅通期クリムトの影響

この中だと「初夏の流」だけが前期のみです。
色鮮やかでインパクトのありそうな絵なので、見てみたかった気もしますが、今回は事前チェックもしていなくて、気付いたら後期だったので、選択の余地が無かったです。

まぁ、京都市美術館の所蔵なので、関西在住ならまた機会はあるでしょう。

上村松園|人生の花/舞仕度/虹を見る

No作家名作品名期間備考
2上村松園人生の花1899後期
57上村松園舞仕度1914通期
95上村松園虹を見る1932通期

どれを見ても安心感のある上村松園。
着物の綺麗さは最早言うまでもありません。

<人生の花>

花嫁の髪飾りが特に綺麗だった。

昔は花嫁衣装に黒の振袖が使われていました。
黒は最も格式高い色で、他の色に染まらない、という意味もあるようです。

<舞仕度>

舞いを披露する直前の女性の表情が良いですね。
少し緊張してそうに見えます。

<虹を見る>

虹が綺麗。リアルな虹ですね。

竹内栖鳳|羅馬古城図/日稼/若き家鴨

No作家名作品名期間備考
4竹内栖鳳羅馬古城図ろーまこじょうず1901通期
34竹内栖鳳日稼1917通期
101竹内栖鳳若き家鴨あひる1937通期

こちらも安心感のある竹内栖鳳。
たった3点ですが、どれも栖鳳の違った魅力が詰まっています。

<羅馬古城図>

欧州の水墨画は栖鳳の代表作でもあります。
雰囲気が良いですね。
城の上には銅製のミカエル像があり、そこだけ緑青を使っているようです。

ローマにあるサンタンジェロ城で、今は博物館になっています。

<日稼>

言われなければ竹内栖鳳の作品だとわかりませんね。

栖鳳自身も批判があることをわかっていてやったようです。
当時の若手画家の影響もあったかもしれませんね。

<若き家鴨>

やっぱり一番の定番は動物絵ですね。
家鴨の毛の柔らかさを感じられる絵です。

千種掃雲|海女/つれづれの日/木陰

No作家名作品名期間備考
6千種掃雲ちぐさそううん海女1908通期
11千種掃雲つれづれの日1909通期
70千種掃雲木陰1922通期

知らない画家でした。
(見たことあるのかもしれませんが)
洋画家の浅井忠あさいちゅうに学んだということで、画材は違いますが、ほぼ洋画です。

<海女>

<つれづれの日>

<木陰>

猫が可愛い。

木がNo.19の土田麦僊「島の女」と同じで、イチジクっぽいです。
気になって調べてみると、土田麦僊の絵は八丈島を描いており、千種掃雲も八丈島に行っているようです。
同じ年に「八丈島の海岸」を描いているので、八丈島な気がしますね。

野長瀬晩花|被布着たる少女/夕陽に帰る漁夫

No作家名作品名期間備考
15野長瀬晩花被布着たる少女1911通期
57野長瀬晩花夕陽に帰る漁夫1920通期

知らない画家でした。
今回、一番印象に残った画家かも。

<被布着たる少女>

服の表現が前衛的でインパクトがあります。
デビュー作でこれを出すこと自体が凄いです。

京都の新古美術品展で三等賞を受賞した作品です。
ただ、文展(現在の日展)では受け入れられなかったようです。
まぁ、文展は悪くない気がするけどな、それは

ちなみに、翌年の文展京都会場前で秦テルヲと二人で個展をやったそうです。

新しい物を作るのは良いけど、他に対して攻撃的になるのは少し嫌かな。
世の中は弱肉強食であり、競争社会だから仕方が無い部分もあるけれど。

<夕陽に帰る漁夫>

画面一杯が夕陽に染まっているのが印象的。
構図的には青木繁「海の幸」(1904)を思い出した。

土田麦僊|島の女/海女【落書】

No作家名作品名期間備考
19土田麦僊島の女1912通期
23土田麦僊海女1913通期

<島の女>

島の女
島の女
制作情報(※以降の落書きも共通)

[制作日]
2023年11月23日 落書き/彩色

[道具]
・鉛筆
・色鉛筆
・ノート(リングノート)

ゴーギャンの影響を受けたと思われる作品です。
八丈島で構想を練ったようです。
木が気になったのですが、イチジクっぽい。

No.70の千種掃雲「木陰」も同じ木が描かれています。
制作年は離れてますが、千種掃雲も八丈島に行っているようです。

<海女>

海女
海女

顔が漫画っぽくて、悪く言うと手抜きにも見える。
「島の女」と全然違います。
1年でこんなに変わるかね?

甲斐庄楠音|横櫛

No作家名作品名期間備考
33甲斐庄楠音かいのしょうただおと横櫛よこぐし1916後期

9か月ぶりの再会です。
前回、初めて見た時はもっと不気味に感じたけど、今回はそんなに不気味に見えなかった。

岡本神草|口紅【落書】

No作家名作品名期間備考
43岡本神草    しんそう口紅1918通期
口紅
口紅

蝋燭の近くで手鏡を見ながら口紅を塗っています。
表情から指先、身体まで、艶めかしい舞妓です。
当時、ヨーロッパで流行っていた世紀末絵画(クリムト)の影響があるようです。

画面上は明るいですが、実際には蝋燭の明かりだけなので、実際はもっと暗いですね。
目も吊り目というわけではなく、暗いから目を細めているってことかな。

実際には↓こんなイメージかな?
これはこれで面白そう。

口紅(加工後)
口紅(加工後)

金田和郎|水蜜桃【落書】

No作家名作品名期間備考
42金田和郎かなだわろう水蜜桃1918通期
水蜜桃
水蜜桃

こちらは吊り目の猫です。

水蜜桃すいみつとう
白桃全般のこと。
高級な桃の名称に使われることもある。

この画にはNo.33「横櫛」(※)とNo.43「口紅」との因縁があります。
※横櫛は1918年の別バージョン

1918年の第1回国画創作協会展(国展)に出品され、樗牛賞ちょぎゅう  を競い合います。
村上華岳が「横櫛」、土田麦僊が「口紅」を推していたが、決着がつかず、竹内栖鳳が「水蜜桃」を選んだようです。

素人目には「横櫛」、「口紅」と比べると地味に見えます。

小野竹喬|郷土風景

No作家名作品名期間備考
36小野竹喬おのちっきょう郷土風景1917通期

セザンヌの影響を受けたと言われる作品。

セザンヌと言われるとサント・ヴィクトワール山に見えてしまう。
↓これが近いかな。

セザンヌはサント・ヴィクトワール山を沢山描いています。
故郷であり、晩年を過ごした場所でもあるエクス=アン=プロヴァンスにある山です。
描き過ぎて静物画のテーブルクロス帽子の形も、サント・ヴィクトワール山だという話もあります。

堂本印象|訶梨帝母

No作家名作品名期間備考
69堂本印象訶梨帝母かりていも1922通期

訶梨帝母は鬼子母神のことです。

仏教絵画ですが、完全に聖母子像の構図です。
服装もそんな風に見えます。

訶梨帝母かりていも鬼子母神きしもじん
仏教を守護する天部。
元は子供を食べていた悪い存在だったが、仏に諭され子供を守るようになった。

福田平八郎|双鶴/花菖蒲

No作家名作品名期間備考
77福田平八郎双鶴そうかく1923通期
97福田平八郎花菖蒲はなしょうぶ1934通期

<双鶴>

伝統的な日本画という感じです。
毛並みや足が細部まで描かれていて、画力の高さがわかります。


<花菖蒲>

こっちの方がデザイン性が高く、福田平八郎の個性が表れている気がしますね。

感想「コレクション展」

特別展「京都画壇の青春」と関連したコーナーがあります。
岡本神草、福田平八郎、小野竹喬など、作品数は結構あるので、特別展の一部として考えていいでしょう。

福田平八郎|少女/納涼/雨

No作家名作品名期間備考
福田平八郎少女1917通期
福田平八郎納涼1918通期
福田平八郎1953通期

2024年に大阪中之島美術館で回顧展があるので、改めて注目したい画家です。
「雨」はこちらでも出品されます。

<少女>

25歳の頃の作品です。
虎っぽい配色の着物が印象的です。

絵自体は正直上手い絵には見えない
素朴な少女です。


<納涼>

26歳の頃の作品です。
後ろ姿で表情はわかりませんが、手足のバランスなど手慣れた感じがします。
1918年は京都市立絵画専門学校を卒業した年なので、学習の成果が出たんでしょう。


<雨>

最初に福田平八郎を見た時に一番印象に残った作品。
自分の中では福田平八郎と言えばこれです。

小野竹喬|奥の細道句抄絵

No作家名作品名期間備考
小野竹喬奥の細道句抄絵
五月雨をあつめて早し最上川
1976通期
五月雨をあつめて早し最上川
五月雨をあつめて早し最上川

最上川は暴れ川と呼ばれ、日本三大急流にも数えられています。
水面だけの絵ですが、流れの強さがわかりますね。
波の高さや水の色を見ると、増水している状態にも見えます。

・日本三大急流
 最上川(山形)
 富士川(長野、山梨、静岡)
 球磨川(熊本)

※常願寺川(富山県)は上記より急流だが、知名度が無い為、含まれないとのこと


何となく調べてみると、制作前の数年間でも大きな洪水が発生していました。
特に1967年の羽越豪雨うえつごううは大きな被害がありました。

国土交通省(最上川の主な災害)

下記で写真や映像も見れました。
カラーではなくても、写真と映像は見ていたかもしれませんね。

羽越水害アーカイブ

アーカイブの中には最上川が通る長井市の被災時の映像がカラーで残っていました。
豪雨が去った後なので、増水はしているものの、波は落ち着いている状態でした。

グスタフ・クリムト|古代ローマ人の長衣をまとった女性像

No作家名作品名期間備考
グスタフ・クリムト
Gustav Klimt
古代ローマ人の長衣をまとった女性像(2)
[ウィーン大学大広間天井画<法学>の「正義の女神」のための習作]
1903-07後期
古代ローマ人の長衣をまとった女性像
古代ローマ人の長衣をまとった女性像

No.43の岡本神草「口紅」が影響を受けたとされるクリムトの絵がありました。
習作ではありますが、構図や顔にクリムトらしさが出てます。


以上

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